秋の夕陽に照らされ、就業の鐘が鳴り響く。
鉄筋コンクリート3階建ての校舎にて、
ここは姪吉舎(めいきっしゃ)学園生徒会室。
日々、このありふれた世界で異形な生徒達の悩みを統括する組織。
それが、姪吉舎学園生徒会である。
「我が学園の生徒達。後悔よりも先に手を動かしな!」
彼女は生徒会長の唄乃会長。18歳。
「おっさん、話聞いてるのか?」
「誰がおじさんか!?お兄さんと呼びなさい!!リアルJK!!」
影伽のおん 22歳。生徒会書記。
顔中心から左目の下まで伸びる前髪が特徴で、ワイシャツに
☆この学園の特殊なところは、
「ちょっと~。急に名言らしいこと言っておきながら、
そう言いながら、身長150cmの少女。
ただ、特徴的なのは赤黒いおさげ髪だけではなく、
俺はいつもどおり、視線を迷わせながら姉貴分に応える。
ちなみにとある理由で、俺はこの少女のことを姉様呼びしている。
「姉様。会長はいつもこんな感じでしょ?単純明快、言語道断、
☆この学園には、血の繋がっていない家族が存在する。
「……………のおん。」
重ねて4人目の少女が一言だけ言葉を発する。
「…え?なんで年下なのにまだ姉呼びなのか会長に説明しなきゃって…?えぇと、
☆この学園では、"憑神の件"と言えば色んなことが許容される。
「なんで一言だけで言葉を理解してんのよ…テレパシー?」
会長が豆鉄砲を食らったような顔で尋ねる。
一言だけ。溜めて溜めて言葉を放ったのは、生徒会会計のまた子。20歳。
面妖な格好であるが、彼女は気にしない。
「……食べる?」
そっと帽子に手をかけようとするまた子。
「「「「やめてくださいいい!!!」」」」
また子以外全員で生徒会室の隅っこに後ずさる。
また子はベレー帽にキノコを飼っているのだ。
どうやって育て、帽子に収めたかは不明だが…冬虫夏草、
初めて見たとき、懐月姉様以外は気絶してしまったものだ。
「また子お姉ちゃん、久しぶりに喋ったと思ったら、
話し方が乱暴なのはこの生徒会室の最後の一人。リュネット・カラ。17歳の少女。
普段は占い師を職業にして生計を立てているらしい。
「影伽お兄ちゃん、先に死ぬのは貴方です…。」
カラは先輩後輩関係なく"お兄ちゃん""お姉ちゃん"と呼ぶ。どうでもいいことだが、名字とお兄ちゃんは違和感しかない。
「……………。」
「あ、また子は、驚かせてごめんなさいだそうです。」
「なんで会長の私以外はまた子の話す内容がわかるんだ…。」
「俺と懐月姉様、また子は1年同居してるし。」
「最初は大変だったわよ~。この子、
「…………。」
「…お姉ちゃん達は、家族みたいなもの、ですか?」
「「「だね。」」…。」
「ははっ。3人の仲がいいのは今に始まったことじゃないだろう。
「いや、要するに日々切磋琢磨していきましょうってことよね?
「先月、この町で15人もの人が亡くなっている。」
全員に神妙な空気が走る。
「まぁ、そんなこと、今の日常ではしょうがないことなんだがな、
「後悔のないように…ね。私は特に未練なんてないけれど…。」
「……………………キノコ。」
「………あ、また子は色んなキノコを育てたいらしいです。僕もまだ、………
「…影伽お兄ちゃんは、どうせエロゲ ですよね~?愛を育てるんです?」
「違うよ!純然たるポッケから出てくる怪物育成ゲームだよ!!…
「えと…
「俺は何を極めてるの!?それに、
「ふぅん。どうですかね~。」
「カラも大人になればわかるよ。人生、
そこで会長が口をはさむ。
「そうなのか?影伽おっさん?」
「いや、おっさんじゃないよ!?唄乃会長!?」
「まぁ、そういう訳で、
「「「余計なお世話!」」」
会長は巷でお節会長と呼ばれている。武力、
「あ、会長。カラ、授業中にお菓子ありがいいでーす。」
「無論、却下だ。」
「…こういうのって、自分で"コレが正しい"
懐月姉様がこちらを見る。…あぁ、……わかりましたよ。
「会長!僕は彼女が欲しいのですが、どうしたら良いでしょうか!
"何かやる気"を出した会長に向けて、
「…ウチにいる四天王を倒せ。はい次~」
「「「ちょっと待って下さい」」」
「なんだお前たち?…
「てゆーか、四天王っていつの時代の話なの?唄乃お姉ちゃん?」
「おっとすまん。今は七大魔王か。」
「「「もっと増えちゃったよ」」」
「"嫉妬"の七香には気をつけた方がいいぞ。なんせ奴は露出狂…
「これ以上無駄な設定の畑を耕すのはやめてください!」
「むぅ………だったらカラ。お前はいい案あるから?」
「なんでちょっと噛んだんですかお姉ちゃん?」
「お前の名前言いづらいんだよ。
「「何言おうとしてるの!?」」
懐月姉様を残してツッコミに励む。
「固有名詞じゃなく股扱いだなんて、やるわねこの生徒会。」
「姉様の下世話スイッチに火がついたよ」
「のおん。いえ、影伽のおん。今時童○じゃモテないのよ?」
「な、それはそれでステータスじゃろうがい!」
「ぷぷー。
「おうおう!会長は殺ル気満々らしいのう!」
「水上置換」
「なんで今中学で習う気体の捕集方法言ったの姉様!?」
頬を赤らめながら、俺と唄乃会長がツッコミを入れる。
「エロマンガ島」
「π」
「コレを聞いて、2人はビビッとこない?」
「懐月はとりあえず、アタシ達と学校の教材に誤ってくれよ…。」
会長が深いため息をつく。
「懐月姉様。セクハラですよ。」
「のおん。そのセリフは飽きるほど聞いたわ。」
「普段どんだけ言ってんだよ!青春真っ盛りか!!…
会長がやれやれと言った感じで呆れている。
「そういえば、姉様いつも深夜に帰ってくるよね。まさかえん……
「失敬ね。それは夜中にゴソゴソ音を立ているのおんと、
「原因お前らじゃねぇか!?」
「影伽お兄ちゃんは、夜中そんなに煩いの?」
「五月蝿いのよ。動物園のぞう○ん並にパ○パ○…」
「変なところに網掛けしないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「わかった。もういい。それ以上は聞かないでおこうぜ。皆。」
「唄乃会長何わかった風な顔してるの!?
「遠い夏の思い出~♪(上の空)」
「会長ぅぅぅぅ!!!!」
「ま、それは置いといて、だ。」
「一生、生徒会室に置いておいてください…。」
「また子の汚部屋はなんとかしないと…なぁ?」
「凄い小さなところで纏まろうとしてますね会長…。」
「お兄ちゃん。小さいだなんて…
カラが外を見つめる。
「なんだって!?」
窓の外を見ると、白い、蜘蛛の糸みたいなのが校舎を覆っていた。
「あの、会長…外がファンタジーみたいになってるんですけど…。
「また子は自分の家を綺麗にするとして、うちの校舎を綺麗にしないと…。」
「どんな危険な植物育ててたんだよ!?
「え、影伽お兄ちゃんの家、そんな近いの?」
「ま、まぁ…。でも今まで気づかなかったぞ。」
「………ピカっ。」
「…え?お兄ちゃん。
リュネット・カラがまた子の言葉を会長向けに伝える。
「いや、それは知ってるけど尋常じゃない速さだなぁ…。」
「さて。本来ならお前ら影伽・床夏・また子の3人に任せるところだが、……
「…唄乃お姉ちゃんはいつも校庭30周くらいしているでしょう?
「………それは準備体操だ。ひどい時は、
「ボーリング!?……校庭の地盤がゆるむから程々にね!?」
「…じゃぁ、チーム分けだな。アタシと影伽。また子とカラ。
「……………根拠は?」
「戦闘力を平均化したんだよ。アタシを100として、のおんを-
「俺は役に立たないと!?
「男なんて、皆どこかしらに菌床がついてるもんだろう?」
「…菌床はないですけど、勲章はありますよ…。」
せめてもの抵抗とばかりに言い返してみた。
「後は懐月が50、カラが10、また子が40かな。」
「私って会長の半分しか力が足りないのかしら…。」
「今は春だからなぁ…。夏だったら、
「…そうですね。私の憑神は、夏の間しか活動しませんし…。」
「いや、ブラが透けるからなぁ…。」
「…ちょ、会長、ドコを見ながら言っているのかしら?」
唄乃会長は下世話な顔をしながら中指を立てる。
「で、カラ。今回は役に立たないだろ。
「………。窒素。」
「ええと、
「アタシはこの腕一本で十分!」
「物理ですか!?
「いや、胞子が気持ち悪いから"気"で吹き飛ばすぜ。」
「何処の○イヤ人ですか!!」
「アタシも念が使えりゃあよかったんだけどさ…。」
「そういえば、会長の憑神ってなんなんですか?」
さっきから言っている憑神とは、神より授かる力。例えば、鬼を進行すれば鬼のような怪力を得ることができるというものだが、それは50年前の話で、今は人さえ殺せないほどの力しかない。しかし、雑務をするにはおあつらえ向きなのだ。
「ん…。○悟空さんだけど?」
「えぇ…!?、本当ですか?」
「そうそう、後、黒崎○護、夜神○かな。」
「えぇ!?すごい!コレなら会長の強さもわかります!!」
「いや、嘘だけど。なんかパッと教えちゃったら、
「…なんの時間だったんですか今の!?」
「お兄ちゃん。私はコレ使ってみるよ。」
そう言って手に持っていたのはポン酢。
「…純粋に楽しむ気でしょ!?」
「人生楽しまなきゃ損ですよ。」
「1人だけ何キノコ狩りみたいに楽しもうとしてるの!?」
「だって、いいサンドバックを見つけた唄乃お姉ちゃんとか、
2人は既に既に狩を始めている。
「まぁ、正直あの2人でやればすぐ片づいちゃうんだけど、
「じゃあこうしましょう。
「うーーーん。まぁ、それも生徒のためになる…。」
「そして、1人五千円でよく当たる占いがついてきます。」
「何本業の仕事やろうとしてるの!?時と場合を弁えてよ!」
「キノコ占いだよ~!」
「…どんな占いか気になるー!!」
カラは 菌の粉 を振りまいた。
「お兄ちゃんがキノコに対峙しても、全然変わんないって出たよ!
「君達出鼻を挫かないでくれるかなぁ!?」
3時間後。
結局俺は会長の〇イヤ人並みの強さにはついていけず、カラを休憩所を営むことにした。
「これは…椎茸かな。」
「お兄ちゃん!ほら私の松茸~!」
「なんで所有権主張したの…。」
俺達はバーベキューセットを並べ、
「おーい。みんな連れてきたよ~。」
床夏懐月姉様が屈強な男達をゾロゾロと連れてくる。
「姉様。相変わらず男性人気が凄いですね。」
「…チッ。」
カラがめっちゃ舌打ちしていた。いや、
「あらぁ?幼女の唾なんてご褒美よね?」
「「「あらほらさっさー!!」」」
「後ろの男子達に無理矢理変なこと言わせないで…。」
しかし。
「さぁ、お食べなさい。キノコを食べることで、
「露骨なセクハラやめてぇぇ!!」
「キノコとは…………心の中にある強い精神のことなのに!!」
「独特すぎる解釈を始めようとするのもやめてください!!!」
「テメェ1人の悪影響が、私たちの印象を悪くすんだぞ。
「あらあら。
勝ち誇った顔で次のキノコ伐採へと向かう姉様を見送った。
カラは塩をまいていた。
「元気か!?お前ら~!」
「「会長!」唄乃お姉ちゃん!」
スポーツドリンクを手に取って渡す。
「休憩ですか?会長も流石に、3時間もぶっ続けなんて…」
「いや、休憩はいいんだけどさ…。」
「?」
はてなとカラと顔を見合わせる。
「寂しく…なった。」
「「そっちですか~」」
「アタシ。思うんだ。
「妙に達観している!?」
「影伽…アタシ達、全然決着ついてなかったよなぁ…。」
「お、お2人の間に何があったんですか!?」
「そりゃあまぁ、色々と…なぁ。」
「あんまり思い出したくないですけどね。」
「気になります!無料で占ってあげるので聞かせてください!!」
「…カラ会計。それだけじゃあ足りないぜ。」
「お姉ちゃん。カラ、できることならなんでも…」
「いや、金額的に」
「単行本10冊分以上!?」
「さてと。残りのキノコ、刈ってくるか。……影伽。」
ボトッ…と、白いキノコを目の前に投げられる。
「あとで決闘だ。」
「いや、手袋投げてぇぇえ!」
会長は見えない速さで走り去っていった。
「……ドクツル。」
入れ替わりのように休憩スペースにやってきたのは、
「また子お姉ちゃん。」
「あ、コレ、食べられないんだね…。」
「火炎放射器、何本目?」
「………XM42。」
「あ、会長に、8000円くらいして高いから3本でやめてって言われて、
「また子お姉ちゃん。校舎燃えなきゃいいですけどね…。」
「………(ヾノ・∀・`)。」
「え!?考えてなかったって何!?!?」
「お、お兄ちゃん!見て!!」
校舎の端に黒煙が見えた。
「も、もしかして燃えてる!?
「おいおい。こんな日常系があってたまるかよ。カラ!
「は、はい!!」
「会長!!姉様ー!!無事ですか!?!?」
2人を探しに校舎へ駆け出した………のだが。
「はぁぁぁぁ!!!!真・正拳突き!!!!」
会長が拳を振るうと、風圧で1階から3階までの火が消し飛んだ。
「さぁ。ダーリン達?。
姉様の掛け声と共に、男達が火を囲んで各々鎮火させていった。
「ふ、2人とも…怪我とかない…?」
「当たり前だろう。女子高生たるもの、
「お、俺の知ってる女子高生じゃないよぉぉぉ!!!!」
その光景は、キノコの異常繁殖よりも衝撃的だった。
…………そんなこんながあって、校舎のキノコはほぼ綺麗に駆除された。
「本日の活動~終了!!」
会長の宣言があれば、俺たちはすぐさま活動を終えることにしている。
「「「「お疲れ様です。」お疲れ様~。」じゃぁね。お姉ちゃん達~。」…………。」
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活動ポイント キノコ狩り(全74平方メートル)
・ピッタコス・唄乃 ・・・40% 拳でキノコを粉砕。破片は消滅
・床夏 懐月 ・・・30% 特殊な技法を用いて広範囲のキノコを殲滅。なお一部部活動を妨害したと報告されている
・また子 ・・・20% 一般的な方法でキノコを殲滅。一部報告書に不備があったので再提出。
・影伽 のおん ・・・5% 特筆なし
・リュネット・カラ ・・・5% 特筆なし。但し校内で認められていない商売の気配あり