<松岡圭祐小説を時系列順に読もう~その14~>

松岡圭祐『ヘーメラーの千里眼 完全版』(角川文庫)

 本作では岬美由紀の高校生~防衛大学校時代が詳しく描かれます。そして、これまでの作品にも登場していた伊吹直哉という人物と岬の関係についても詳しく描かれています。
 しかし、『The Start』以降の新シリーズにおける設定・描写とは整合性がとれないのでは、と感じる点もそれなりにあります。そこは、「基本的には一話完結」の観点から納得することにしましょう。


・今、松岡作品で「みかがみ」と言えば『水鏡推理』の水鏡瑞希ですが、そういえば本作にも見鏡季代美が登場していましたね。
・本作から、司令官が仙堂芳則から濱松重正に交代しています。ここで疑問。本作の濱松の役職は「航空方面隊司令官」。しかし、『千里眼 完全版』での仙堂の役職は「航空総隊司令官」となっている。これは何か違いはあるのだろうか。ググったら、「空将」って一人じゃないのか。知りませんでした。
・上巻p162、岬と嵯峨敏也が「同じ歳」となってしまっています。修正漏れです。
・防衛大学校のウェブサイトをみてみると意外に興味深い。学生の身分は特別職の国家公務員。毎月学生手当が支給され、期末手当も年2回支給されるそうです。そして入学と同時に防衛省共済組合の組合員となる、つまり健康保険や年金等の社会保険にも加入するということです。この待遇面から考えるとやはり「学生」ではなく「労働者」、幹部自衛官となるための教育・訓練をするのが仕事という感じですから、任官拒否を問題視する動きがあるのも筋は通っています。
・「ゴーリキー」というワードからマクシム・ゴーリキーが出てくるが、まずはポケモンだろう、と思ってしまったのであります。「ゴーリキー」で検索すると、まずはポケモン、次にマクシム・ゴーリキー、さらには剛力彩芽。最後のは思いつかなかった...。
・下巻p316に誤植。「三番機」が「三香機」になっています。どうやったらこうなるのでしょうか。
・知識がないのでよくわかりませんが、核魚雷が近く(50m以内)の海中で爆発して海水が雨のように頭上に降り注ぐ、って大丈夫なんでしょうか。
・ラストシーンの構図は『水の通う回路』に通ずるものがありますね。