<松岡圭祐小説を時系列順に読もう~その13~>
松岡圭祐『千里眼の死角 完全版』(角川文庫)
私が千里眼シリーズを初めて読んだのが、この『死角』の小学館文庫版でした。
高校のころ、読書の時間が設けられていて、そこで読む本を書店で探したところ、平積みされていたのがこの本でした。「~万冊突破」みたいな帯に誘われて購入した記憶があります。読んでみて面白いとは感じたのですが、このときはそこで終わりました。
大学生になり、長くなった通学時間をどう過ごそうかと思いついたのが「読書」です。家の段ボールをあさったところ、発掘されたのがこの『死角』。そういえばこれ面白かったな、と。
読んでみると、やはり面白い。続編はないのだろうか、と本の後ろをみてみると、思いのほかたくさん出ていることがわかりました。
そこで迷います。『死角』の次の『ヘーメラー』を買うか、それとも最初の『千里眼』を買うか。考えた結果、とりあえず『ヘーメラー』を買って面白かったら最初から読むことに決定し、上下巻を購入。
今思えば、凄いスピードでした。買ったその日のうちに上下巻を読み終えてしまいました。夜中の3時まで読んでいたと記憶しています。これは面白い。ここから、私の千里眼フリークが始まったのです。
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・冒頭のジャジ・ア・バラカは、『トランス・オブ・ウォー』にも登場します。
・嵯峨敏也は英語ペラペラだったのですね。
・後の『ブラッドタイプ』で描かれている嵯峨と岬美由紀の関係は、本作からの流れといっていいでしょう。
・「以前にダビデが東京カウンセリングセンターに現れたときにも、この小説の第一巻を渡された」とありますが誤りです。『千里眼の瞳 完全版』に出てくるシーンですが、場所は本郷の臨床心理士会事務局近くの本郷公園のはずです。実は、小学館文庫版ではこの記述通り、東京カウンセリングセンターでダビデと岬が会うという場面でした。旧作の設定が残ってしまっていますね。
・着替えて街に出てから「なによこの格好」と言いだす岬美由紀。本当に嫌なら外には出ないでしょう。
・ダビデが推測する通り魔の特徴。結構な部分で自分に当てはまってしまう。周囲からはそのように見られているということです。気を付けよう。
・マリオン・ベロガニアについては『背徳のシンデレラ』に詳しく書かれています。
・代々木上原のマンションの駐車場って地下のイメージがありましたが、屋外だったんですね。
・ダビデが嵯峨に対して「まるでソムリエだな」というのは、稲垣吾郎を意識した小ネタです。
・岬が自分の手首を切るシーンは何度読んでもゾッとします。
・コンピュータが自殺する、妙に腑に落ちる結末でした。
・ラストシーンでも、嵯峨と岬が同じ職場で働いているような描写が残ってしまっています。
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松岡圭祐Official siteのInformationに情報が載っていますが、朝日新聞デジタルで松岡圭祐トークイベントの様子(約1時間)が動画配信されています。
『探偵の鑑定』発売を受けてのイベントのようですので、『探偵の探偵』『万能鑑定士Q』に関する話がほどんどですが、千里眼の話題もちょっとだけ出てきます。