<松岡圭祐小説を時系列順に読もう~その8~>
松岡圭祐『千里眼の復讐』(角川文庫)
旧作では『千里眼 洗脳試験』が入る位置ですが、クラシックシリーズではこの『復讐』に置き換えられました。別作品と言っていいでしょう。『洗脳試験』も催眠シリーズの嵯峨敏也、朝比奈宏美、外山刑事も出てきてオールスター的な楽しさはあったんですけどね。
表紙はこれまでの写真ではなく、イラストになっています。おそらく中央に大きく描かれているのは岬美由紀、その左が鬼芭阿諛子、左端が友里佐知子だと思います。友里佐知子は、映画版『千里眼』で友里を演じた女優『黒木瞳』さんをイメージさせるようなイラストです。そして鬼芭は、やはり「別に」発言で話題になった女優さんのイメージでしょうか。
・香港の空港で自爆したのは友里の影武者、越谷暁美です。このあたりの事情はクラシックシリーズ最終作『千里眼 背徳のシンデレラ 完全版』で書かれています。p583に出てくる友里の日記も『背徳』で描かれます。完全新作だけあって、のちの作品への伏線がいろいろあります。
・特殊調整課の「調整官」と「調査官」の表記が混在しています。
・山手トンネルは全線開通の時に『タモリ倶楽部』でも取り上げられていました。
・石鍋良一。事件解決は彼の情報解析によるところも大きかったということになります。
・酸素欠乏症の話題が出てきます。これについては新シリーズの『千里眼の教室』で取り上げられます。
・P.426~427に「田辺」という名前が出てきますが、文脈的に『千里眼 ミドリの猿』に登場する「赤坂喜一郎」としなければならないところだと思います。次作の『千里眼の瞳』に田辺博一という人物が登場しますので、『復讐』と『瞳』を同時に改訂作業をしていて間違えてしまったのでしょうか。
・『運命の暗示』を読んだ時に、クリフという人物がのちの作品に果たして出てきたのか、と思いましたが、本作に出てきましたね。記憶にありませんでした。
・高遠由愛香が結婚相手の条件についていろいろ語っていますが、後に結婚することになる男性はこれらの条件をクリアしていたのか。たぶんダメでしょう。それ以外の決め手があったに違いない。
・山手トンネル事件で閉じこめられたのは2118人、生還できたのは489人となっていますので、死者は1649人、生還率は約30%となります。
・友里の愛車アストン・マーティンDB9に乗ることになる岬ですが、心理的に大丈夫なのでしょうか。