<松岡圭祐小説を時系列順に読もう~その5~>

松岡圭祐『千里眼 ミドリの猿 完全版』(角川文庫)

 本作品は『千里眼 運命の暗示 完全版』とセットです。基本的に1話完結の千里眼シリーズですが、これだけは2冊で1つの作品といえます。この『ミドリの猿』が前半部分になります。

・新シリーズで登場した高遠由愛香が、クラシックシリーズになって本作のストーリーに組み込まれました。高遠が成功したのは岬美由紀による部分も多かったのです。
・黛邦雄と鍛冶光次の設定も旧作から変更されています。
・クラシックシリーズでは嵯峨敏也31歳、岬美由紀28歳となりました。小学館版では基本的に2人とも28歳でしたから、「嵯峨君」「美由紀さん」と呼んでいたわけですが、年齢設定が変わっても同じ言葉遣いで行けるようにするためか、「嵯峨君」と呼ぶための理由づけを行っています。ちょっと苦しい感じがあります。しかし、岬は後の作品で38歳の成瀬史郎(外務省)にもタメ口でしゃべりますから、元々そういう性格だということで納得することは可能です。
・「相模原団地」というワードが登場します。これが新シリーズへの伏線になります。完全版への改稿で書き加えられたかと思いきや、小学館単行本版『千里眼 ミドリの猿』に既に記述がありました。当初からの設定だったのでしょうか。