肺尖部と肺底部における換気量および血流量を比較するといずれも肺底部でより大きい。
特に血流量についてその差が大きい。
いずれについても重力によってかかる力の大きさが異なることが一因とされている。
肺尖部にかかる重力による力の大きさが肺底部における大きさより大きいため、肺尖部では吸息せずとも肺胞がある程度膨らんでおり、肺コンプライアンス(C=ΔV/ΔP)が小さくなると考えられている。
そのため、肺尖部では肺底部に比べ換気量が小さい。
しかし、換気量の分布は無重力状態でも存在することが確認されており、結論は出ていない。
一方、血流量については血液にかかる静水圧の大きさが肺尖部と肺底部で異なることが関係する。
ただし、重要な前提として、肺動脈圧は体循環系の動脈圧に比して非常に小さいということがある。
肺循環系はあくまで肺の血流を維持すればよく、平均肺動脈圧は15 mmHgに過ぎない。
ここで、静水圧を考える。
静水圧P=ρghに対して、ρ=1.00, g=10.0とする。
また、心臓から肺尖部までの距離を20 cm、肺底部までの距離を10 cmとする。
すると、心臓の高さに比べ、肺尖部では静水圧が-27 mmHg、肺底部では+14 mmHgとなる。
肺毛細血管圧は、肺動脈圧よりもさらに小さく8-10 mmHgである。
結果、そもそもが小さい肺毛細血管圧な上に静水圧がより小さい肺尖部では、毛細血管は肺胞内圧により押しつぶされ、血流が途絶えてしまう。
一方、肺底部の毛細血管は静水圧により血管抵抗が小さくなり、血流量の増加を招く。
このように、血流量に関しては肺尖部と肺底部で換気量以上に差が大きいため、換気血流比が肺尖部では大きく、肺底部では小さくなる。
余談であるが、血流量は肺コンプライアンス(肺組織の弾性)に影響しないだろうか?
仮に、血流量の少ない組織では弾性が小さくなるとすれば、換気量の低下を招くはずである。
しかしこれも重力があっての話にはなる。