“堂場瞬一” 『Sの継承』、book | No pain!,No gain! by #15K.U

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“まかぬ種は生えぬ” “労なくして益なし” “痛みを持って陣地を得る”
2012/06以降、継続的な“run” や“trailrun” に目覚めた事と
高校・大学でのRugbyの記憶がcross overする。そして、
OVER50でこれからも“pain”&“gain”の人生でありたい…




“堂場瞬一” 『Sの継承』

内容(「BOOK」データベースより)

1963年、五輪前夜に人知れず計画されたクーデター。
2013年、警察を翻弄する連続毒ガス事件。
時空を超えたふたつの事件を繋ぐ
ミッシングリンクは白骨死体と「S」。
その正体とは!?



とにかく分厚い本です…600ページ近く。。。(*´Д`)=з

個人的に “スポーツ小説家” として好きな作者ですが、

ここまでの長編は初めてです…期待感でワクワク(^_-)☆


話の方は、

同じ東京での50年という時空を隔てた、

二つの目的を同じくする “革命” の物語です。。。


共通の目的とは、

民意を反映していない “議会制民主主義”

転覆を目指し、

全ての腐敗した無能な政治家を追放し、

大臣以上のみを国民が直接選挙で選出し、

余程のことがない限り任期を全うさせる。。。


そして、

あくまでも主導は官僚に委ねる “専官体制” で、

“直接民主主義” 体制への転換を図る。。。


ただしこの二つの “革命” は、

それぞれの時代背景と民意においては大きく異なり、

毒ガスという手段 “S” を現代も踏襲するものの、

時代の流れの中で細かな手法は変化し進歩します。。。



一つ目のクーデターは昭和38年。。。


しかし、

仲間割れから未遂に終わります…私3才です。。。


終戦後敗戦国として奇跡的な復興を遂げつつ、

翌年に復興の象徴である “東京オリンピック”

開催を控えた好景気に沸く東京が舞台です。。。


一方で、

戦勝国アメリカにとっては、

敗戦小国日本の驚異的経済的発展が今後、

経済大国アメリカをも脅かす存在になることで、

アメリカの監視やコントロール下から離れ、

アジアでの軍事的重要拠点を失いかねない。。。


そのことが、

結果的に本国を旧ソ連や中国の脅威に

晒すことになるのではないか?


と…そんな中、

持ち出されたのが “日米安全保障条約”

早期締結だったのでしょうか?よぅ知りません。。。


しかし、

この時代にはアメリカの従属国となることを

良しとしない旧軍部関係者もまだ多くが、

社会の中枢で存命していたことでしょう。。。


それに加えて、

反戦を唱えつつ現行政府に不信を募らせる若者が、

大きな勢力となり “安保闘争” へ向かい。。。


やがて、

まとまった大きなうねりとなって、

“体制批判” へと発展していったのでしょうか?

これがいわゆるこの後長く続いていく

“学生運動” の始まりか…?これまた、よぅ知らん。。。


なんとなく、

この時代の発展途上下で混迷した社会的背景と

まだ大きな影を落とす敗戦を組合わせて想像すると

“革命” という、

現代では荒唐無稽な言葉も、

なにやら妙に信憑性があるように思えてしまいます。。。



と、ここまではいい感じで現代へ突如、

“毒ガス事件”
の勃発!と “白骨死体” の発見!

という形で “革命” が現代に蘇ります。。。


昔の未遂に終わった “革命” をトレースしながら、

現代らしくネットを武器に若者中心の民意を煽りつつ、

スマホを駆使した同時テロを画策しますが。。。


首相に全国会議員の総辞職要求を突き付け、

“毒ガステロ決行” のタイムリミットを設定します。

こうなれば、

終盤になればなるほど盛り上って、

『手に汗握る!』

という展開になって行って欲しいところ。。。?


残念ながら、

終盤になればなるほど緊迫感はあまり伝わってこず、

一人の19才の若者が、

ネットの仲間を同志として、

日本の議会制民主主義を転覆させる…?

「そら無理やろぅ~、どないすんねん?」

という疑心暗鬼の気持ちで読み進める中、

いい意味で期待を裏切るような想定外の出来事もなく、

「ほ~ら、やっぱり無理やった…」

で終わってしまいました。。。プッ(笑)


もぅ少し、

“革命” という大言壮語な目的が、

現代に受け継がれていった背景や手段の緻密さや

将来のビジョンを描いて欲しかったですね。。。


ただただ、

鬱屈した狂気の少年が、

突然、

おもちゃのように恐怖の大量破壊兵器を与えられて、

嬉々として無差別大量殺人事件を起しかけた…

だけに。。。残


こういうのを “手段の目的化” というのでしょうか?


50年という年月を経て再現される事件として、

とても興味深かっただけに残念でした。。。(´д`lll)


半世紀を経て蘇る狂気の少年による

毒ガス大量殺人未遂事件としては、

良かったと思います。。。(^_^)v