ツアー前にすること。

書類チェック。

ルーミングリストにはグレッグとマーヤがいた。

息子と娘と同じ名前の人達。

どんな人だろう?とつい思いを馳せるのも、ツアー前あるある。


びっくりするほど、マーヤはグチグチ文句言いで面倒だった。

一方、グレッグは時々とぼけた質問をしてくるけれど、温厚な長身のオージー。


グループは21名。

まあまあなサイズ。


うるさくて面倒な女性2人が即仲良くなり、それぞれの旦那様を合わせて4名グループができた。


少しすっとぼけた女性3人組がいて、そこに賑やかでしっかり者の女性が加わった。


後の人達は、穏やかで知性的で、良識ある人達で、その人達を私は選抜メンバーと密かに呼んだ。


全員の顔と名前と性格が一致した時点で考えた。


うるさい人達を含む数名は京都で旅を終了する。

とぼけた3人組は京都の後、大阪に行き、別のガイドさんに託すことになる。


選抜メンバー10名は私と共に広島と大阪へと旅を続ける。


つまり選抜メンバーに、京都終了後、初めてツアーが楽しくなったなどと思われては大失敗なのである。


グループツアーというのに日々自己主張し、我が物顔で振る舞う奴らはうざいが、ガイドはキチンと全体を掌握しているから、こちらは迷惑被らないし、自分達は十分楽しんでいる。


と感じてもらえなければ、このツアーは失敗に終わる。


何も言わない人達に声をかけ、何も言わない人たちと視線を合わせているうちに、騒ぐ女性達がふと気づいたようだ。

このグループってほんと居心地いいわよね。

皆さんオンタイムで、とても礼儀正しいし。


だろ?見習えよ


とは言わなかった。


努力をしたつもりだったけれど、10名になった時の差は激しく、自分の力不足を感じた。

もうそれはそれは全てがスムーズで、何も問題がない。

この快適さを、前半9日間提供できなかった無力感。

申し訳ない。


皆、合言葉のように、大丈夫、もう誰も遅れないよ、誰も文句言わないよ、と言い笑い合う有様。

私までYou are the chosen onesと言う有様。


去年も同じ時期にこのツアーをした。

最大の後悔として喉を潰し声が出なくなり、京都で降板をした。


だから、今回は絶対体調に気をつけようと思った。

けれども3月からの繁忙期で、ちょうど疲れが溜まる頃。

今回は帯状疱疹になった。

折しも、昨年と同じようなタイミング。

高山で最初の違和感。

金沢で発症。

京都で医者にかかる。


背中がボツボツでも、痛みがあっても、声を失いガイディングできなくなるよりずっとマシだ。


ツアーを全うできてよかった。


帰りの新幹線で友人ガイドの訃報を知る。

帯状疱疹なんてなんでもない。

命には別条ない。

薬で治る。