先月、町内の大清掃がありまして、みんなで溝掃除やら草むしりをするんですが。
とあるおばあさんが、1人で参加しているのが見えた。
数年前、このおばあさんは息子一家と賑やかに暮らしていたけど、今は1人である。
実は私は、ここの息子さんの奥さんと仲がよかった。
というのも、旧職場で一緒だったんですよ
仲良くなる数年前から、この家のことは、なんとなく知ってた。
息子より2学年下くらいの息子さんがいて、この町内ではちょっと珍しく完全同居だった。
別に同居だから知ってたわけではなくて、ここの姑さんが、なんとも言えず性悪だったから知ってるだけ。
とにかく町内で有名だった。
だから旧職場で息子さんの奥さんと一緒になって、同居の愚痴をよく聞くようになった。
彼女いわく、同居当初は本当に大変で、することなすことケチをつけられるし、洗い物をしたら洗い直されるし、洗濯物は畳み直される。
最初はいちいち腹を立ててたけど、もう心を無にして、心の中で姑をバカにしながら愛想笑いで流すことにした。
子どももいるので、それどころじゃないし、
「あんまりうるさいから、「それじゃあ、お義母さんがやってください」とか言って、こき使ってるw
こっちも忙しいし、文句言われるくらいなら、してもらった方が楽だから」
とのことで。
ある年の、自治会の大清掃の日、私と彼女が公園の隅で草むしりをしていた時のこと。
まだ当時は旧職場に勤めていた私達は、公園の隅で職場の話をしていたんだけど。
背中側から、いきなり姑が登場して、
「背中が出てるよ、みっともない」
と、嫁にグチグチ言い始めた。
座り込んで草むしりをしているから、Tシャツの腰の辺りから、少し下着のキャミソールが見えていたらしい。
そのうち姑は、まるで私に聞かせるみたいに大きな声で、彼女のことを貶し始めた。
彼女は、姑の言葉がまるで聞こえてないみたいに、能面みたいに薄ら笑いで草をむしっていたのを、とてもよく覚えている。
「全く化繊の下着なんか着て。
下着は綿が一番いいのに。」
とか、よくわからないことを言い始めて、私もって感じだったんだけど。
化繊というのは、彼女のチラ見えしていたキャミソールがエアリズムのことを言ってたみたいで。
「最近の若い人は、こんなペラペラの肌に悪そうな生地の下着を着て。
子どもにも着せるから、ずっとよくないって言ってるのに。」
と、私の目を見ながら訴えかけてくる。
えー…、別に誰が何を着ようがよくない?
私は綿よりエアリズムのツルツルした素材とフィット感が好きなので、エアリズム系が好きだけど、綿しか着ない人のことを否定しないし、強制もしないけど?
だから私は、小さい声で、
「私もエアリズムですよ」
とだけ答えて、姑さんに背を向けて、草をむしり続けた。
それを聞いてた彼女がくすくす笑ったので、姑さんはますます怒って何か言ってたけども、なんなんだろうなあ。
家庭の中しか知らない人なんだろうなあ、この人は、と思った。
自分の信じるものが全てで、自分と違う考えの人を否定して、強制する、みたいな。
自分の言いなりにならないのが、気に入らない駄々っ子みたいな感じだと思った。
彼女の話によると、姑さんは近所にあまり友達もおらず、家族としか話し相手がいないらしいから。
視野がだいぶ狭くなってるし、世間とか社会とか知ってるつもりになってるんだろうけど、かなり取り残されてるなと思った。
自分の思ってることすべてが正しくて、それを家族に強制するっていうのは、この年頃の女性にありがちなことだけど。
うちの母も含め。
だけど、ここまで酷いと面倒だなと思った。
その後も、犬の散歩中に彼女の家の前でバッタリ会って立ち話してたら、家から姑さんが出てきて、彼女を貶めるようなことを私に言ってくるんですけども。
それって、どういう感情なんでしょうね。
他人さんに自分の息子の奥さんの悪口を言う。
それで私が同調したら、スッキリするのかしら?
同調するわけないじゃん!
その時は確か、「嫁は塩じゃなくてアジシオを使った、信じられない!」みたいなことを言ってきてたんだけど。
「私もアジシオ使いますよ」とまた小さい声で言って、彼女に笑われた。
そして去年、彼女は隣町に新しく家を建てた。
で、前まで住んでた家には義母さんだけが住んでいる。
どういういきさつで、息子一家が家を建てたのかは知らないけど。
彼女は20年近くずっと同居していたので、今はきっと解放感でいっぱいだろう。
1人で草むしりをしているお姑さんの背中は、とても寂しそうに見えました。
今まで、嫁や孫達と参加していた自治会の掃除なのに。
だけど冷静に考えると、毎日毎日あんなに貶されて過ごす20年間って、どんな感じだったんだろう。
嫁である元同僚の気持ちを考えると、解放されてよかったね、としか言えない。
家を建てたのが同じ町内ではないにしろ、隣町なんだからすぐ近くだし。
お義母さんも気楽に暮らせてたらいいなとは思ってたけど、あれはかなり寂しそうに見えたわ…。