国際ロマンス詐欺といわれる詐欺が増えており、昨年はその被害が100件以上も報告された。

 この詐欺の手口はたとえば「X]、「Facebook」などのSNS,あるいは出会い系のマッチングサイトを通じて行われる。若いひとより40歳以上の人に被害者が多い。寂しく暮らしている人のよい老人などはとくに注意が必要である。

 私の場合は、FBで知り合いの投稿にコメントしたところ、そのコメントに、あなたと同じ意見です、考え方が合うようですから友達になってくれませんかというコメントがつけられた。FBにはたまに投稿しているのでそちらへのコメントではなかったのが不思議であったが、気軽に友達承認をしたところメッセンジャーで連絡がきた。 AKI HARU(仮名)という44歳の米国在住らしい女性であった。それに対して、私はあなたの2倍以上離れた老人であるし、話が合うとは思わないといって一応断ったが、すると自分が京都生まれであり、母親が日本人で父親は米国人であるが、母親の両親が結婚に反対したので10歳のときの私をつれて両親と共に米国へ移ったのだという身の上話を始めた。

 ラインのQRコードを送るからラインで話をしたいということなのでラインで話を始めたところ、実は自分整形外科医であり、夫に2年前死なれたが今は整形外科医として国連の医療チームとしてイエメンのキャンプ派遣されているという話になった。きわめて危険な場所なので8ケ月前から辞職を申し入れているが受け入れられない。米国では小学5年生の娘を寄宿舎つきの私立校へ預けているのだが、辞職したら日本へ行き、小さなクリニックでも開きたいと考えているのだが、日本でのすでに祖父母は死んでおり知り合いがいないので助けて欲しいという話までになった。

 ここまでの話を素直に聞けば、自分のできる範囲で助力してあげようという気持ちになる。この歳で鼻の下を長くしたわけではない。米国ではさんざん苦労した上に、イエメンで命の危険を感じながら負傷者の手当をしている整形外科医のシングルマザーを励ましたいという気持ちになるのは老人としても当然の気持ちであろう。メッセンジャーでは数枚の本人の写真と外科医の服装をした写真も送られてきている。最初は日本語による会話だったが、私がのスマホで日本語をローマ字入力するのは面倒だったのでほとんど英語でやりとりをした。(相手の英語は完全であり、日本語については少し違和感のある表現であったがよく漢字を書けるなと思った。やはり家庭では日本語を使って教育されたかなとあまり疑問には感じなかったが、自動翻訳機を使えばこの程度の日本語になると気がついたのは後のことである。また、ひとりではなく組織的でえあれば日本語のできる人間も入っている。しかし、話がお涙頂戴的人間うまく作られているという気があったことは事実である。以下カッコ内はすべて私の感想)

 その後のやり取りは、キャンプ内での勤務の体制とか、待機室から救急室によばれて大変だったとか、世界中に通じる国連の医師ライセンスをもっているとか、日本でのクリニックの開設にはどの程度の資金が必要だとか約ひと月程度のやりとりが続いた。(日本でクリニック開業するには基本的には日本の医師免許が必要なので国連のライセンスというのはおかしいし、開業の前はしばらく病院勤務が有利だというようなアドバイスには一切具体的な返事がないことなどには強い違和感を覚え、調べてみたら国連はイエメンに医療チームなど派遣していないし、米軍派遣もないことが分かった。写真の画像検索にかけたところXでも、このブログでもあちこちに同じような写真があることが分かった。つまり、他人へのなりすましであり、送られたきた写真は本人ではない。この時点で詐欺師あるいは詐欺組織を相手にしているらしいことが判明した。)

 そのような会話が続いた後に、今日、突然に国連関係者と面接があると伝えたきた。その1日後にはこのあとイラクでの2週間のオプションの義務を果たせば辞職OKといわれてサインをしてきた。ついては、退職金と危険手当が支払われたが大事なものを留守中危険なキャンプにおいておくことはできないので、国連便を通じて送るから私に保管をお願いしたい。ついては、正式な名前と住所、ID番号、電話番号を至急知らせて欲しいという要請が入ってきた。(多分これからが詐欺本番である。要請したとおりに知らせた後は、荷物の送付するときに検閲にひっかり違反金を払わないとそちらへ届けることができないので一時的に金を払い込んで欲しいという連絡に変わるはずである。)

 私はあなたのことを実際には知らないのでそれはできない。E-mailのアドレスを知らせるので、国連のライセンスのと医師免許証のコピーを送って確認させて欲しいと返したが、今はそんなことをする余裕がないという返事があり、実際、E-mailには一切なんの連絡もない。実はチームの安全のためにSNSは禁止されているのだという。(SNSであれだけ会話や要請をしていながら、今更、なにを言っているのかと思った。多分、準戦時体制の派遣なら情報が外部に漏れないように一切外部との通信は禁止されているはずである。退職金などは現金支払いではなく、故国の本人の口座へ送金されるかあるいは小切手であるはずである。)

 こんなわけで最後に、国連職員を名乗る詐欺に注意という国連の広報と日本の在イエメン大使館の医師や軍人を名乗るイエメン詐欺に注意という広報を送って、この人とのやり取りはいっさい拒絶という措置をとった。)しかし、その広報はフェークだから、拒絶をなんとか取り消してくれとかいう連絡が今でも途絶えない。

 このように、詐欺組織は執拗にあなたを狙ってくる。それこそチームですから英語や日本語担当などを決めながら交互に広く友達要請を出しているのでしょう。E-mailではいっさい連絡はないのは発信サーバーから住所などをつきとめられるので使わないようにしているのであろう。

 いずれにしても、SNSでは知らない人とむやみに友達にならないことがまずこのような詐欺にかからない第1歩である。