「私自身は花粉症じゃないから…患者さんに同調はできないからわからないのよねぇ〜」
おっとりとした口調で小首を傾げて言う和香に男性はニコニコと言った。
「医者が全部の病気やアレルギーに罹っていたら堪らないよ。治してくれる人がいなくなっちゃうじゃないか。」
「それもそうねぇ〜」
ひとしきり笑うと男性は改めて礼を言って診察室を後にした。
手を振って送り出した和香は改めて花粉症と向き合う気持ちで付箋に手を伸ばすと愛用の万年筆で《花粉症》と書いてモニターの横に貼り付けた。
花粉症、アレルギー症状のうち植物由来のアレルゲンによるものを指す日本人には馴染み深くなってきている疾患である事はよく知られている。花粉症ぐらいと思われがちではあるが極端な例ではアナフィラキシーショックを引き起こす事もあるので馬鹿にできないものがある。症状も個人差があるので対応方法も様々で同じ花粉症でも掛かる科目が変わってくるのもよくある話だ。一般的に理解が広まったのもつい最近の事ではある。
「和香先生〜午前中の診察ここまでです。お昼にしましょう。」
受付と診察室を仕切る扉を開けてNMC名物・ひふみ三人娘の一人、希実が顔を見せた。希実の後からそれぞれ財布を片手に叶絵と珠栄も診察室に入ってくる。
久野 希実(ヒサノ ノゾミ)
NMC三人娘の1人。よく来院する患者さん達から看護師さんと呼び掛けられているが看護師ではなく、医事員である。事務服や私服で勤務すれば良いと言われても本人が好んでピンクの看護着を着用している事が間違えられる大きな要因だろう。
藤坂 叶絵(フジサカ カナエ)
NMC三人娘の1人。よく看護師さんと呼び掛けられているが看護師ではなく検査技師だが、本人が好んで着用している水色の検査着は一般的にはパンツタイプのナース服と思われても仕方がないだろう。
光畑 珠栄(ミツハタ タマエ)
NMC三人娘の1人。ER看護師経験もある正看護師。NMCに勤務する看護師は珠栄1人が正式な登録となる。ナースキャップが廃止されがちな風習の中、珠栄は戴帽式で戴いたナースキャップを好んで着用している。ナース服もキャップの合わせた白がトレードマークだ。
もちろん希実も叶絵も助手として手伝いはする事はある。小さな診療所と言えどチーム医療を大事にするのがNMCだ。