東中野でやっている小森はるか監督の『息の跡』をやっと見る。物を見ることも聞くことも触れることも本当に知っている人たちが心揺さぶられる映画を届けてくれた。感激したので、現場に三年間も移住して自分の親ほども歳の差がある男と向き合うとんでもなく感性豊かな二十代の女性の映画表現はとんでもなく新鮮で奇跡のような映画だと書こうと思ったが、ぼくの周りだってバングラデシュに三年間も住んで現場と向きあっている二十代の女性がいることに気がついて、口を慎まねばと反省する。感性ある若い人たちは、すでにぼくなんかよりずっと先に進んでいるのだ。

バングラデシュというと、いま来日しているグラミンのムハマド・ユヌスさんが有名で、今回も僅かばかりの協力をさせていただいたが、昔やはり同じように来日していたユヌスさんから突然呼び出されて珈琲をご一緒させていただいて(ユヌスさんは紅茶だったが) お話を伺ったり、現地で一緒に記念撮影させていただいて感激した記憶は確かにあるものの、いまは、そんなことより現場でもっと時間をかけてそこにある事実と丁寧に向き合って、できることを工夫していくことの方が大事にきまっていると考えている。とても及ばないが、佐藤さんや小森さんのように。