1924年、ラオール・ウォルシュ監督。原題は、”The Thief of Bagdad"。



いわずとしれた、ダグラス・フェアバンクス製作・主演でユナイッテドが配給した超大作である。2時間半の映画で、なかなか再見する機会がなかったが、やはり面白い。ウォルシュ演出の活劇を純粋に楽しめばよく、上山草人についても有名なので、あまりコメントすることもないが、下に思いつくまま、いくつか書いておく。なお、下にあげた以外に、この映画に宮廷魔術師として出演している「ボヘミアの王」サダキチ・ハートマンなども、調べてみれば面白い人である。


淀川さんが、この映画の美術をビアズリーの絵のようだと評しているのは非常に的確だと思うが、セシル・ビートンが美術で協力しているというのは記憶間違いではないかと思う。この映画の美術はウィリアム・キャメロン・メンジズである。誰でも覚えている『風と共に去りぬ』のアトランタの火事のシーンは彼の美術によるものである。


この映画の特殊効果は、まだまだ初歩的な段階であるが、もともと「特殊撮影」「特撮」という英語にあたる ”Special Effects”  (いまは SFX というのが一般的)が初めて、映画のスクリーンにクレジットされたのは、この後の1926年のウォルシュの『栄光』が初めてとされている。なお、ダグラス・フェアバンクスは、この作品の製作の前に、フリッツ・ラングが演出した『死滅の谷』の中国のエピソードにおける魔法の絨毯や、魔法の馬に関する特殊効果の権利を買い取っている。


ダグラス・フェアバンクスは、1883年生まれであるから、この映画のときは、もう40歳を超えている。それであの肉体美で、スタントなしなのだから、やはりすごいと思う。いまの映画だと対抗できるのは、タイプはまったく違うがトム・クルーズぐらいであろう。あえていえば、クラーク・ゲーブルとトム・クルーズを足して二で割ったようなと評せばいいだろうか。


The Thief of Bagdad (YouTube)