1928年、キング・ヴィダー監督。 原題は、”The Patsy"。この作品、『お人よし』という邦題が使われていたものがあったのでそれに習ったのだが、日本で公開されたかどうかは未確認である。

この映画を YouTube でみて心底驚いた。あのマリオン・デイヴィスが主演し、キング・ヴィダーが監督したサイレントのコメディ映画である。マリオン・ディビスはメディア王、ランドルフ・ハーストの愛人であり、オーソン・ウェルズの『市民ケーン』のケーンは、ハーストがモデルであることは誰でも知っていると思うが、その作品で彼女は大根役者(映画の中ではスーザン・アレクサンダーという下手な歌手に置き換えられている)として描かれているのは周知のとおりである。実際、ハーストは46本も彼女の映画を作らせ、それらはすべて失敗に終わったとされるのが通説である。しかし、その46本の作品を実際に見て、マリオン・ディヴィスが本当に大根役者だったことを確認した人はどのくらいいるのだろうか。


このヴィダーが監督した「コメディ」作品を見てほしい。ヴィダーは本当に社会派の監督だったり、メロドラマを得意とする監督なのであろうか。見逃すはずもないと思うが、特におもしろいのは、一番上の写真にあるように、マリオン・ディビスがメイ・マリー、リリアン・ギッシュ、ポーラ・ネグリの物真似を次から次にやるところである。リリアン・ギッシュの物真似のところなぞ、あまりにも似ているので涙が出るほど爆笑してしまった。やはり、映画は実際に自分の眼で作品を見ないかぎりわからないと、つくづく思える作品である。


なお、この映画で母親役をしているマリー・ドレスラーは、この作品に出る前に人気が落ちて、もう自殺しようと考えていたそうであるが、アラン・ドワンが、この映画に出演することを勧めてくれて、この映画以降、人気がまた出始め、彼女はなんと60歳を超えてスターの座をつかむことになるのである。


The Patsy (YouTube)