1929年、ジガ・ヴェルトフ監督。原題は、”Человек с киноаппаратом"。

何度見てもいいので、いまさらと言われても書く。

ニュートンのようにリンゴを見るんだ!
世界に眼を向けろ!
普通の犬をパヴロフの眼で見るために、
 映画を爆破しに、
 映画館へ行こう、
 映画を見るために。

「私は、キノグラース=映画眼だ」「私は、不断の運動である」という宣言にふさわしい作品である。しかし、感違いしないでほしい。最新のCGを駆使した映画がかならずしも「映画」になっているわけではないように――日常茶飯の経験だ――当時最新の撮影技術を駆使したからといって、この作品が「映画」として優れているわけではない。

この映画は、物語映画さえ否定しているわけではない。また、この映画にも出演者はいる。映画のキャメラがその出演者である。「世界は映画そのものである」というのが、ここでの物語である。そこに映る世界のすべては、まるで映画の装置の一部のように機能している。ショットとショットはその運動の類似を主題として結合し、音楽のリズムやメロディーに喩えられるような「つなぎ」によってショットとショットの間に意味が生まれてくる。

ジガ・ヴェルトフは「コマのように回転する人形」という意味で、本名は、デニス・アルカディェヴィッチ・カウウマン。撮影は、ミハイル・カウフマン。デニス・カウフマンの実弟である。作品中に登場するキャメラマンもミハイルのはずである。デニスには、腹違いの弟がもう一人いて、これがボリス・カウフマンである。彼は、ジャン・ヴィゴの『新学期操行ゼロ』『アトランタ号』のキャメラであり、1954年に、エリア・カザンの『波止場』でアカデミー賞撮影賞をもらうことになる。


"Man With a Movie Camera" (YouTube)