あまり人のいない時間のバー、コンセルヴァトワール。窓の外は夕焼けに染まるセントラルパーク。支配人は、こちらに背中を向けてテーブルを拭いていた男性を呼びました。「私はヴィクター。こいつは給仕長のジェイコブ、長年のコンビなんです。」少しずんぐりとしたジェイコブは、にっこりと笑いました。とても暖かい感じがするほほえみ。二人が並んだようすは「美女と野獣」に出てくるルミエールとコグスワースのようでした。最終日まで毎日、夕刻に座ったこのお店のカウンターには、バレエコンクールとは別の空気が流れていました。その年のニューヨーク、このあたりで働いていた人々のあいだで「日常の一部」になっていた時間を、旅の記憶としてしきりに思い出すのです。華やかな舞台のことよりもむしろ強く。