路地裏。――私にとっての昭和の原風景。
ブロック塀と黒い板塀の間のせまい隙間。
すっかりかどが取れて丸みを帯びたた敷石と緑の苔。湿った匂い。
塀に立て掛けられた雨ざらしの黒い自転車、
避けるようにして奥へ進む。
ふっと目の前が開けて、そこは裏庭。四方を塀や生垣で囲まれている。
モンシロチョウやムラサキシジミ。
オオバコ、シロツメクサ、ハコベにカタバミ。
ここはひいおばあちゃんちの裏庭。
足元にはうちの近くにいるのよりずっと大きい黒いアリ。
家の裏手をぐるりと囲む縁側から家に上がる。
中は暗くて広い。
ひいおばあちゃんはいつも掘りごたつのところに座って笑顔で私を見てる。
階段は梯子みたい。段と段の間から下が見えるから、ちょっとこわい。
縁側の突き当りにはお便所。
手を洗うときは軒下からぶら下がったタンクを使う。
Tの字を逆さにした形のつまみを回すと水が出る。
何回もやってると、お水がなくなるって叱られちゃう。
最後にこの家に行ったとき、ひいおばあちゃんは昼間なのに布団の上で寝ていた。
横で大好きなお姉ちゃんが泣いてた。
さようなら、を言った。