【にくざんほりん】
宴会などが、ぜいたくをきわめていることのたとえ。

◇  ◇  ◇

ホルモンは旨い。

独特の甘さ、薫り、歯応えなど、様々な味わいがあり酒にもよく合う。部位によってはカロリーも抑えられ、女性にもおススメである。

自宅の近くにお気に入りのホルモン焼き屋があり、ついつい食べに行く。多いときは週に一度通ってしまうことだってある。

しかし最近、ホルモンは恐ろしい危険性を持っていることに気づいてしまった。

あれはゴールデンウィークの初っ端、4月30日のことだった。

その日は野外ライブに誘われ、朝からワインを両手にとある会場へと出向いていた。初夏を思わせる暑いぐらいの日差しと、気持ちの良い音楽に囲まれ、飲めや踊れやの大騒ぎ。それはもう楽しかった。

しかし、楽しい時間はあっという間、ライブ会場をあとにすることになった。「さて、どうしよう」と向かった先は、いつものホルモン焼き屋。まだまだ今日という日をしゃぶり尽くそうという魂胆だ。

その店は、七輪を囲んでジュージューいわせながらホルモンをつつくというスタイル。いつも私は焼き係を担当する。その日ももちろんみんなの分を焼きながら、あーだこーだと盛り上がっていた。

その時である。突然、頭の中で「ガッキーンっっ!!!」という鋭い音が響き渡り、同時にこれまで感じたことの無い激しい痛みに襲われた。硬めの肉を食べていたのが災いしたか、舌の左前部を噛んでしまったのだ。それはもう、親の敵を討ち取ろうかという勢いでである。

その後1分程度だっただろうか、痛みに体を震わせながらその場に凍り付いてしまった。ひょっとしたら失神していたのかもしれない。そう言えば、それまでの思い出が走馬灯のように駆け抜けた気もする。

いつしか正気を取り戻した私は、ハイボールの氷で舌を冷やしながらその日はなんとかやり過ごした。七輪を囲むみんなの目には、地獄絵図と見紛おうかという血みどろの舌が映っていたそうだ。申し訳なかった。

しかし、本当の地獄はこの後に待っていた。連休の初っ端に負った傷は、残念ながらかなりの深手で、連休の終わりまで苦しみ悶えた。

痛みで外出する気も失せ、せっかくの好天にサイクリングもできず。気晴らしに行ったいつものウドン屋では、美味しいはずのダシが傷口を猛攻撃、涙と鼻水にまみれる結果に……。

今年のゴールデンウィークは、ブラッディーウィークとして深く刻み込まれた。心にも舌にも。

ホルモンを食べるときは気をつけてね。


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