【とうはつじょうし】
激怒して髪の毛が逆立つこと。

◇  ◇  ◇

メガネ人にとって床屋は鬼門である
メガネを外さなければならないからだ。

外している間の我々は驚くほど弱く、怯えてすらいる。暗闇の部屋に拘束されている気分と言えばご理解いただけるだろうか。

そんな状態で不意に話しかけられても、どこに向かって返事をすれば良いのかわからず戸惑ってしまう。できればそっとしておいて欲しいところだが、せめてオドオドと挙動不審に見えないよう、密かに頑張っている。

ともあれ、見えないものは見えない。非メガネ人にだってそれぐらい酌みとってもらいたい。

先日の話。

メガネを理容師さんに渡した途端「分け目はそこでよろしいですか?」との質問。記憶を辿り「今日は帽子を被っていたせいか少し真ん中に寄っているはずです。今は見えませんが。」

しかし、何故かキョトンという音が聞こえ、鏡越しにもう一度「分け目はそこでよろしいですか?」
しゃーないからもう一度「少し真ん中に寄っていると思います。本来はもう少し右よりです。メガネが無いので見えませんが。」

結局ピンと来ない様子で会話は終了……先が思いやられる。

一通り終了後、出来映えチェックの為メガネを差し出す彼。私の両手はケープの中。いつもの人ならかけてくれるところである。

無言で見上げていると、右手付近のケープをかき上げる彼。右手を出して自分でかけろということのようだ。しかし、“つる”が畳まれたメガネを片手でかけることは物理的に不可能。右手でメガネを持ちつつ、もう一度無言で見上げていると、「かけたほうがよろしいですか?」と彼。「はい……」。

彼が非メガネ人だからなのか、それとも単に無想像力人だからなのか……。おかげで、煩わしい支払い後のアンケートが、その日はとても楽しみだった。


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