【りょうたいさいい】
実際の状況に応じて、物事を現実に適した形で処理する策を講じること。

◇  ◇  ◇

「ソバまだですか?」「すみません!今出ました!」

出前が遅れている客から、安否確認や催促の連絡が入ったときに使われる魔法の言葉“イマデマシタ”。実はまだ出ていなくたって構わない、そんなこと確かめようもないのだから。実はまだ作っていなくたって構わない、いざとなりゃ「道に迷いました」って言っとけばいいのだから……。

底抜けに不誠実な対応であるから、本当にそんなことを言う店など存在しえない……なんなら都市伝説かと思っていた。

とある土曜日の11時30分、いつもなら私が昼メシを考え出す時間帯に、弁当屋のチラシを見つけた。「たまには弁当にしよか」というワケで、私たちは「唐揚げ弁当」と「チキン南蛮弁当」(鶏好きっ)を注文した。

電話の向こうから「お届けは12時30分から13時の間になりますがよろしいですか?」との声。腹は減りつつあったが混雑する時間帯、仕方が無い、了承し、録りためた暴れん坊将軍を観ながら待っていた。

12時30分……まあ、まだまだやな。
12時45分……そらそうやろ、混んでるねんて。
12時50分……結構人気あるんかなぁ?
12時55分……もう来るで。1時になるもん。
13時00分……うむ。

さて、本来こちらがすることではないが、安否を問い合わせてみた。

「11時半に注文いたしました○○(住所)の□□(名前)ですが、いつ頃届くのかなと思ってお電話しました。」
「あ、すみません。さっき出ましたのでもう少しで着くと思います。」

ふむ、“イマデマシタ”の派生形“サッキデマシタ”の登場である。本当に存在したのかという驚きに屈することなく、誠実な対応を促してみた。

「もう少しって何分後ですか?」
ですからさっき出ましたので。そんなにかからないと思います。」
「具体的にお願いします。そもそも遅れるなら1本連絡するのがスジだと思いますよ。」
じゃあ、確認してお客様に折り返しお電話すればいいんですね?お名前とお電話番号をお願いします。」
「初めにお伝えしましたが、名前は○○です。電話番号は注文時に伝えておりますが。」

開いた口がふさがらない。コチラが何処の何某か知らないくせに“サッキデマシタ”とは。そして折り返しの電話。

「お待たせしました。お届けは30分後になります。」
(オイオイ、キミの店まで歩いても15分で着くぞ。)
「先ほど、既に出発していると伺いましたが、それでも30分もかかるのですか?そんな長時間もかかる理由は?歩いて配達しているのですか?」
「配達はバイクです。たくさん積み込んで回っているからです。」
「なるほど。あのバイクはそんなに多くのお弁当が積み込めるのですか?ちょっと信じられないのですが。」
「あ、間違えました範囲が広いからです。」
「そうですか。13時までに届けるとそちらが約束した客に、まだですかと訊かれているのなら、私ならそれを最優先で届けようと思いますが。それに作ってから30分も経った冷めたものを届ける気ですか?」
「チーフにかわります。」

「お待たせして申し訳ございません。次の便で間違いなくお届けしますので。」
「次の便?さっきの方から既に出発していると伺いましたが。」
「大変申し訳ございません。」
「もう結構です。まだ作ってらっしゃらないようですしキャンセルします。」

その後、本社のバイザーとかいう立場の人間から侘びられたが、その対応がまた無茶苦茶。店舗だけでなく、会社全体がお粗末極まりない。大体、ピーク時とはいえ1時間半超えても届けられないようならデリバリーなんかやめてまえっちゅうねん!

魔法の言葉“イマデマシタ”は、誰にでも通じるワケではないのである。

しかし私って……根性悪いなあ。


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