【てんばつてきめん】
悪事を働くと、その報いとしてすぐさま天が罰を下すこと。

◇  ◇  ◇

「情けは人の為ならず」という言葉がある。

こんなことをアゲつらうと、今さら感たっぷりで恥ずかしいのだが、“人の為ならず”とは、他人に情けをかけてはその人の為になりません、という意味ではない。

他人に親切にすれば、いつかは良い報いとなって自分に戻ってくる。だから誰にでも親切にすべき。との解釈が正解である。中には誤解を避ける為、“巡り巡って自分の為”などと付け足す文も見られる。

とはいえ、巷で他人に親切にするのは容易ではない。電車で席を譲る程度なら時々はあるだろうが、電車に乗らなければ起こり得ないし、そもそも、困っている人を見かける機会などそうそう訪れない。

ならばせめて、人には迷惑をかけないことを常に意識して生きていくのが良いのではないか。当たり前のことではあるが、混雑した街中では人の邪魔にならないように歩いたり、カフェで必要以上の座席を占拠しなかったり、駆け込み乗車をしなかったりなど、些細なことだが私は実践している。

先日、これとは真逆の人間に出会った。

彼は少し混雑した電車内で私の隣に立っていた。必要以上に股を開いてくれるのでコチラのスペースは窮屈、その上新聞をめくるときにイチイチ肘を当ててくるくせに謝りもしないなど、目に余る無作法ぶりを発揮していた。

途中の駅で座席が空き、思いがけずその男の目の前に座ることとなった。しばらくは伏目がちにしていたのだが、ふと目線を水平にしてみると、面白い事態に気がついた。ヤツの社会の窓が全開になっていたのである。

「情けは人の為ならず」、千載一遇の好機、ここは教えて差し上げなければとも一瞬思ったが、先ほどの傍若無人な振る舞いを思い出し、そのまま放置することにした。因果応報である。

人には親切に、せめて迷惑だけは……。


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