【けいこむしょう】
故意に犯した罪は小さな罪でも刑罰を与えること。

◇  ◇  ◇

タバコをあまり吸わなくなって気づいたのだが、喫煙により生じる臭気というのは、想像以上に強烈である。

喫煙所からタバコ休憩を終えて席に戻ってきた人間は、その呼気はもちろん、服や髪の毛などからも、煙やヤニ・或いはそれらと体内の何かが化学反応を起こして生まれた臭気を、これでもかと部屋中に振りまいている。

喫煙者の多くは、しばらくは確実に我慢を強いられる会議などの前に、必ずと言って良いほどタバコを吸いに行く。本人達は絶対に気がつかないのだが、一緒に会議室に入っている他の人間は、その臭いとの戦いを文字通り強いられている。

私も過去には、同様に会議前の喫煙をしていた。今となっては身の毛もよだつ話である。

さて街中では、歩きながらタバコを吸い煙を撒き散らしている迷惑な人間をよく見かける。これは喫煙者であっても疑問に思う非道徳的行為だと思うが、そんな者たちの多くは、あろうことかそのタバコを道端に放り投げたりする。

とある酒をのんだ帰り道に、20mほど前を歩いていた男が歩きタバコをしていた。投げ捨てるだろうなと注意して見ていたら、案の定彼は火のついたタバコを放り投げた。

少し酔っていた私は、止せば良いのに怒りにまかせて大声でこう叫んでしまった。
「何か落としましたよー。」

その瞬間、男は回れ右をしてこちらにゆっくりと向かってきた。まさか戻ってくるとは思っていなかった私は、急上昇した心拍数を落ち着かせながら、取っ組み合いのシミュレーションを始めた。

(パンチは手が痛いよなあ。ここはやはり前蹴りで、防御はカバンを使って……。)

しかし、近くまで来た男は満面の笑みでこう言ったのである。
「すみません。いけませんね。」

なんだか余計に腹立たしい人間である。
ポイ捨てが悪いことは百も承知、後ろめたくってしょうがないが、バレなきゃ別にいい、もしバレても誰にも怒られない……そんなことを思っていたようである。

今度見つけたら何と言ってやろうか、奴らを廃人にするぐらい効果的なひと言を、今は探している。