外に出られない日が、半年以上続いていました。
痛くて、息もできなくて、家の中にいました。
毎日、どうして俺だけこんなめに、と言っていました。
そんなときです。
母が、僕のところに一冊の本を持ってきました。
そして、こう言いました。
「世の中には不思議なこともあるみたいだよ」
それだけでした。
読みなさい、とは言いませんでした。
元気を出しなさい、とも言いませんでした。
本を置いて、帰っていきました。
いま思うと、ここが大きかったです。
あのとき、もし「読め」と言われていたら、僕は読まなかったと思います。
元気を出せと言われていたら、たぶん怒っていました。
母は、何も言いませんでした。
だから、僕はその本を開きました。
本の題名は、『ザ・シークレット』でした。
ロンダ・バーンという人が書いた本です。
僕は、1年に1冊も本を読まない人間でした。
それなのに、不思議と読み進めていました。
書いてあったのは、こういうことでした。
自分がこうなりたいと想像したこと。
声に出したこと。
紙に書いたこと。
そういうものが、現実になっていく。
読みながら、僕はヒヤッとしました。
僕がやっていたのは、全部その逆だったからです。
毎日、人のせいにしていました。
毎日、文句を言っていました。
毎日、怒っていました。
どうして俺だけこんなめに、と声に出していました。
それを、2年半以上続けていました。
もし本に書いてあることが本当なら。
いまの自分をつくったのは、自分かもしれない。
そう思いました。
ここは、はっきり書いておきます。
これは、僕が自分についてそう思ったという話です。
痛みで苦しんでいる人に、あなたのせいだと言うつもりは、まったくありません。
事故も、体のことも、僕のせいではありませんでした。
それでも、あのとき僕は、自分の中のことだけは自分で決められるかもしれない、と思ったんです。
そして、不思議なことが起きました。
その瞬間、地獄の底に足が着いたような感じがしたんです。
ずっと落ち続けていました。
どこまで落ちるのか分かりませんでした。
でも、足が着きました。
底があるなら、あとはここから登ればいい。
なぜか、そういう気持ちが湧いてきました。
半年ぶりに、前を向いた日でした。
ただ、気持ちが湧いただけでは、体は動きません。
ここから僕は、毎日あることを始めます。





