うちには、天使がいます。192.めまい その2 | うちには、天使がいます。

うちには、天使がいます。

ピアノ弾き語り落ちこぼれシンガー・うたうやまねこと、そのパートナーゆかさん、そして寄り目のみけねこメイさんの、命の記録です。

 

 

・登場人物
<ゆかさん>
やまねこの奥さん。2020年9月、卵巣がんにより永眠。
2018年4月初めに腫瘍が見つかり、月末にはトルソー症候群による脳梗塞を発症。
手足や会話に障害が出ながら、摘出手術を経て、
2018年9月には全6回の抗がん剤治療も完遂。
諸事情により、ふだんは実家で母と暮らしながら、歩行のリハビリを中心に、
手足のしびれや難聴、高次脳機能障害など、脳梗塞の後遺症や抗がん剤の副作用と闘いつつ、
週末はやまねことうちで過ごす、という生活をしていましたが、
2019年11月12日、ついに新居でやまねことの生活がスタートしたのもつかの間、
12月11日にはがんの再発を宣告されてしまいます。
<やまねこ>
ゆかさんの夫。
落ち着きがなく要領が悪く、おまけにコミュ障。
いまいち頼りないだんなさまですが、
たまにライブハウスでピアノを弾いて歌をうたっていたりします。
<メイさん>
17年前にへその緒つきで捨てられていたところをやまねこと出会い、
それからずっといっしょに暮していた、寄り目のみけねこ。
2018年12月29日、突然猫てんかんの発作を起こし
翌2019年1月9日早朝、病との闘いの末、永眠。


(なお、病院関係者のかたがたほかの名前は、すべて仮名です)


2020年7月31日の朝。
前夜の激しいめまいを受けて、なんとか眠れたゆかさんでしたが、
6時20分くらいに、ゆかさんの目覚めた気配でやまねこも目を覚ましました。

「どう?」と声をかけると、ゆかさんは「まだぐるぐる回ってる」と言います。
「目開けた瞬間からまわりが回ってる…」
最初にめまいを訴えてから、もう12時間以上過ぎています。
「やっぱりまず病院に電話して、どうすべきか訊きましょう」と言っておきます。
「足の血栓のときだって、とりあえず訊いてみたらすぐに診てもらえて、結果として助かったのだし」
ゆかさんはなんとなく病院には行きたくなさそうでしたが、
「こういうことがあったって報告だけでもしておいたほうがいいよ」と説得しました。

ゆかさんは起き上がり、
「やっぱり気持ち悪くてぜんぜん食欲ない」と言いましたが、
「キウィ刻んどいたのがあるから少しだけでも食べる?と訊くと、
「うん」と言ったので出してあげました。

「働いてた頃、いちどこういうめまい起きたことある。朝起きたらすごく回ってて」
ゆかさんは言いました「メニエール病なんじゃないかなて思った。
そのときは午後からおさまったから仕事行けたけど」
「それからずっと起きてなかったの?」「うん」

9時、病院が開く時間に電話すると、看護師さんとの会話で、
「初診の扱いになると思いますけど、まず耳鼻科に診てもらってください。
そのあとで婦人科にも寄ってください」とのことでした。
そうか、やっぱりめまい、まずは耳鼻科の扱いになるのか。
聴覚過敏ともなんらかの関係はあるのだろうか。

ゆかさんはお出かけの準備に時間がかかりました。
昼前くらいまでかかってしまい、
「午前中の受付終わっちゃうよ」とゆかさんはまるで他人事のように言います。
「え?じゃ、今日は行くのやめとく?」
「電話して訊いてみるよ」
めまいは少しおさまってきた、と言っていました。
「今電話してみたらたぶん瀬谷さん出てくれて、耳鼻科に話通してくれて、
もう終わってるけど診てくれるって。
あと、葛西先生は午後は手術でいなくなっちゃうけど、婦人科には寄っても寄らなくても、
って言ってた」
けっきょく出発は12:30くらいになってしまいました。

病院では、今日は念のために車いすを使うことにしました。
また急にめまいが起こってよろけてしまったりしたら危ない、と考えてのことです。
初診の受付を済ませて耳鼻科の受付にいくと、すぐに呼んでもらえました。
担当は初めての幸田先生という人でした。

先生は眼球にライトを当てて、
「やはり眼振がありますね」と言いました。
やまねこにはわからなかったのですが、やはり専門家が見ると違うのだな、と思いました。
「ここ2週間くらいで風邪や発熱はありましたか?」
「はい。週末に少し」
「さいきん急な聴力の低下とかは?」
「以前から抗がん剤の副作用で聴覚過敏がありましたが、
さいきんは特別悪くなっていないようです」
「そうですか。でも念のために聴力検査をしてみましょう」

結果は「とくに悪くなっていないですね。
前庭神経炎なのではないかと思われます。急なめまい吐き気の起こる病気です。
薬を飲んでいればよくなりますので、トラベルミン(乗り物酔いの薬で有名な)と、
ベタヒスチンを処方しておきますね」
また薬が増えてしまいましたが、とりあえずは服用して様子を見るしかないのだろうな、
と思いました。


「婦人科にも寄ってく?」
「うん」
ゆかさんは婦人科の外来で受付のブザーを押し、
電話の通り瀬谷さんという看護師さんが出てきて対応してくれました。
耳鼻科での結果を報告すると、瀬谷さんもすでに見ていてくれたようで、
食事についてのアドバイスももらいました。
「ジュースで気持ち悪くなることはままあるので、そういうときは水かお茶がいいです。
あと、ゼリーも受けつけないときはシャーベットなどがいいですよ」


うちに帰るころには、ゆかさんは「めまいだいぶおさまったけど、
気持ち悪いのはあいかわらずで、食欲もないよ」と言いました。
「うん、でもまだキウィもあるし、メイバランスでもゼリーでも、
食べられそうなもの食べて」
ゆかさんはとりあえず少しおなかに入れて、
早めに横に、昼間動き回った疲れのせいか、すぐ眠ってしまったようでした。
やまねこも早めに休みました。





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明日9月1日、特別な日のLIVEです。

2024.9.1(Sun.)at銀座月夜の仔猫
「長月の午後」
OPEN14:10/START14:30/CHARGE:\3,000+1D
☆やまねこの出演は5組中4組め、16:20からです。

ゆかさんの命日。心をこめて歌います。
加藤惠子さんとのコラボレーションもプチ復活しますので、
そちらもお楽しみに。