うちには、天使がいます。163.再入院 | うちには、天使がいます。

うちには、天使がいます。

ピアノ弾き語り落ちこぼれシンガー・うたうやまねこと、そのパートナーゆかさん、そして寄り目のみけねこメイさんの、命の記録です。

 


・登場人物
<ゆかさん>
やまねこの奥さん。2020年9月、卵巣がんにより永眠。
2018年4月初めに腫瘍が見つかり、月末にはトルソー症候群による脳梗塞を発症。
手足や会話に障害が出ながら、摘出手術を経て、
2018年9月には全6回の抗がん剤治療も完遂。
諸事情により、ふだんは実家で母と暮らしながら、歩行のリハビリを中心に、
手足のしびれや難聴、高次脳機能障害など、脳梗塞の後遺症や抗がん剤の副作用と闘いつつ、
週末はやまねことうちで過ごす、という生活をしていましたが、
2019年11月12日、ついに新居でやまねことの生活がスタートしたのもつかの間、
12月11日にはがんの再発を宣告されてしまいます。
<やまねこ>
ゆかさんの夫。
落ち着きがなく要領が悪く、おまけにコミュ障。
いまいち頼りないだんなさまですが、
たまにライブハウスでピアノを弾いて歌をうたっていたりします。
<メイさん>
17年前にへその緒つきで捨てられていたところをやまねこと出会い、
それからずっといっしょに暮していた、寄り目のみけねこ。
2018年12月29日、突然猫てんかんの発作を起こし
翌2019年1月9日早朝、病との闘いの末、永眠。


(なお、病院関係者のかたがたほかの名前は、すべて仮名です)


2020年3月10日火曜日、ゆかさんは抗がん剤治療のため入院の予定でしたが、
炎症と白血球の値が高く、微熱もあったため、延期になってしまいました。
ゆかさんの抗がん剤治療は火曜日入院→土曜日退院、のサイクルなので、
次に入院できるのは3月17日。それまでうちで過ごすことになりました。

微熱は、上がったり下がったりでした。
ゆかさんは「朝は大丈夫だったのに、洗濯物干しに行ったら上がっちゃったよ。
動くと良くないのかな」と言っていました。
肺塞栓のためなのか、胸の痛みも続きました。
ときには夜中に「痛い!」と叫んで目を覚ますこともありました。

12日には訪問看護師さんが聴診器を当ててくれて、
「右側の肺がつぶれてる可能性が高いです」と言ってくれたらしいのですが、
ゆかさんによると「痛いのは左側なんだけど」とのことでした。

14日にはホワイトデーでやまねこはパウンドケーキを焼き、
ゆかさんも「おいしい」と言って食べてくれて、
このところからすると比較的食欲のある一週間だったと言っていいかもしれません。

あっという間に17日を迎えました。
先週と同じように、入院用の荷物を車に積み込み、
出勤前にゆかさんを病院に送っていきます。
入院が決まり次第、帰りに荷物を届けることになります。

今回も14時過ぎにメールが入りました。
「入院できました。炎症の値は高いけど、白血球もとに戻って他が大丈夫だから良いって」

仕事が終わって、荷物を持って病院に寄りました。
ゆかさんは血液検査の結果を見せてくれて、「ポートも通ったよ」と言いました。
きのううちで「循環器内科の先生に詳しい話聞いてみようか」と話していたので、
少しその話をしてみたのですが、
ゆかさんはどこか上の空で、頭に入っていないようでした。
「ねえ、青い袋は?」
そういえば先週は持ってきた、パジャマが入っていた袋。
「ごめん、今回は言われなかったから置いてきちゃった」
ゆかさんはあからさまに不機嫌になりました。
「それから、なんか受付で聞くって言ってなかったっけ」
「循環器内科のこと聞いてみようか、って言ってたけど」
「へえ、その程度のことだったの」とゆかさんは遮るように言いました。
「あんなに『僕が聞くよ』言ってたのに、聞いてないんだ」
「そんな風に受け取らないでよ」と言うと、
小声で(でも聞こえるように)「うるさい」というのがはっきり聞こえました。

ゆかさんは「パジャマは100円で借りられるから」と自分で歩いてステーションに行きましたが、
「今日は終わっちゃったって」とさらに不機嫌になって戻ってきました。
やまねこはいろんなことをぐっとこらえて「じゃ、取りにいってくるね」と言い、
車でうちに戻ってパジャマの入った袋を持ってきました。
すでに面会時間は残り30分ほどになっていました。
ゆかさんは「さっき葛西先生来たから、
肺塞栓のこととか循環器の先生に聞きたい、て話しておいたよ」と言いました。
「ごめんね、じぶんが聞くって言ってたのに」やまねこは謝りました。

葛西先生が戻ってきました。
「あ、だんな様もいますね」と言って、もういちど説明してくれました。
「足の血栓はつけねの上から足先までずっとだったのが、ひざ上からになっています。
胸の血栓自体は小さくなっていますが、その先の梗塞巣が濃くなっています。
循環器の先生のお話が聞きたいとのことでしたが、けっきょくはがんの治療になるので、
あらためて循環器の先生に会うには及ばないと思いますよ」
先生は続けました。
「それから骨髄抑制が抗がん剤治療の回を追うにつれて強くなって、
血小板の低下や貧血が起きたので、今回から抗がん剤を減らします。
カルボプラチンは必須なので、ゲムシタビンを80%にします」

ちょうどそのときゆかさんには別の先生が来てルートを取っていたので、
やまねこが説明を聞きました。
ゆかさんのルート取りが終わったあと、やまねこから説明したのですが、
言葉が少しでもよどむと、ゆかさんは「それでなんなの?」とすぐにキれようとします。
なんだか、とても悲しく、情けなくなってしまいました。

面会時間が終わり、帰り道、
「どうして、あれだけ病院まで送迎して、荷物も運んで、
ひとりで働いて買物して食事も作って、
『うるさい』という言葉を投げつけられるのだろう、
ゆかさんに聞いた話だと、ゆかさんが今までおつきあいした男性は、
どちらかというと聡明なタイプが多かったようだし、
やまねこは、そういうタイプにはほど遠い―
頭の回転が遅くて、おまけに吃音持ちで、
やっぱりゆかさんにとっては足りないところだらけの人間なのかもしれない、
どこかみじめな気分で道をたどりました。





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2月8日、祖師ヶ谷大蔵エクレルシでのLIVEも無事終了いたしました。
聴いてくださったみなさん、配信を見てくださったみなさん、ありがとうございました。

次回のLIVEは、横浜白楽になります。

2024.2.17(Sat.)at白楽Nap
「Power」
OPEN17:10/START17:30/CHARGE:\1.600+1D
☆やまねこの出演は6組中4番め、19:15からの予定です。
 配信視聴はこちらから(無料)→
 https://m.youtube.com/user/nodutatane

そして3月17日、年に一度のワンマンLIVEも徐々に近づいてきました。。
2024.3.17(Sun.)at 御茶ノ水KAKADO
うたうやまねこ2024ワンマンLIVE「Fairy Tales」 → https://kakado.jp/
OPEN12:00/START12:15/CHARGE\2,000+1D
☆今年はスペシャルゲストに加藤恵子さんを迎えてお送りします。
 コラボも予定してますのでお楽しみに♪
 配信視聴はこちらから(CHARGE\2,000) →
 https://twitcasting.tv/kakado__/shop

きっと、お会いできますように。