うちには、天使がいます。153.GC療法3クールめ | うちには、天使がいます。

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ピアノ弾き語り落ちこぼれシンガー・うたうやまねこと、そのパートナーゆかさん、そして寄り目のみけねこメイさんの、命の記録です。

 


・登場人物
<ゆかさん>
やまねこの奥さん。2020年9月、卵巣がんにより永眠。
2018年4月初めに腫瘍が見つかり、月末にはトルソー症候群による脳梗塞を発症。
手足や会話に障害が出ながら、摘出手術を経て、
2018年9月には全6回の抗がん剤治療も完遂。
諸事情により、ふだんは実家で母と暮らしながら、歩行のリハビリを中心に、
手足のしびれや難聴、高次脳機能障害など、脳梗塞の後遺症や抗がん剤の副作用と闘いつつ、
週末はやまねことうちで過ごす、という生活をしていましたが、
2019年11月12日、ついに新居でやまねことの生活がスタートしたのもつかの間、
12月11日にはがんの再発を宣告されてしまいます。
<やまねこ>
ゆかさんの夫。
落ち着きがなく要領が悪く、おまけにコミュ障。
いまいち頼りないだんなさまですが、
たまにライブハウスでピアノを弾いて歌をうたっていたりします。
<メイさん>
17年前にへその緒つきで捨てられていたところをやまねこと出会い、
それからずっといっしょに暮していた、寄り目のみけねこ。
2018年12月29日、突然猫てんかんの発作を起こし
翌2019年1月9日早朝、病との闘いの末、永眠。


(なお、病院関係者のかたがたほかの名前は、すべて仮名です)


がんの再発が見つかってからゆかさんが受けることになった「GC療法」は、
1週め:入院してカルボプラチンとゲムシタビンの点滴
2週め:通院でゲムシタビンの点滴
3週め:休み
を繰り返すので、なんだかとても慌ただしいです。

2クールめは途中にCVポートの手術をはさんだので4週間隔になりましたが、
2月4日火曜日には早くも3回めの入院が巡ってきました。

ただ、今回は2点ほどいつもと違う点があり、
ひとつはやまねこの車が不調になり、修理に出されてしまったことです。
なので(もちろん杖がなければ歩けないゆかさんは入院用の荷物を持って歩いたりできないので)
やまねこは車で荷物を届けることができません。

もうひとつは、そういうときは入院前日に連絡が来るのですが、
病室がいつもの5階ではなく6階になってしまったことです。
婦人科以外に外科の患者さんなども入院していて、いつもばたばたある意味にぎやかな5階と違って、
6階には新生児室もあるため、とても静かで、
看護師さんたちも5階のようにフレンドリーではなく、
ゆかさん曰く「優しいけどそっけない」かんじらしく、
ゆかさんは残念そうでしたが、もちろん静かでていねいに扱ってもらえるという長所もあります。

当日の朝、やまねこは普通に出勤し、ゆかさんはタクシーで病院へ向かいましたが、
午後には「入院正式に決まったよ」と連絡がきました。
やまねこは少し考えた末、ゆかさんの巨大な荷物を
(なぜかほかの患者さんの倍くらいの大きさになる)
バスで持っていくことに決めました。
タクシー代をけちったのですが、バス停に着くまでに早くも少し後悔しました―
なんとかバスに乗り、荷物を抱えて座ると、もう前が全く見えない状態でしたが、
それでもなんとかゆかさんの病室に荷物を届けることができました。

ゆかさんは同室の女性ふたりと話していました。
あいさつすると、ゆかさんは、
「奥のベッドの人ね、悪性リンパ腫克服したんだって。寛解だって」
と説明してくれました。
もうひとりの女性が「すごく力をもらえるの」と言いました。
ゆかさんも、もう寛解は無理だとしても少しでも元気を取り戻してくれたら。
「ねこさん、さっそくごめんなさいなんだけど、
6階に自販機ないから、5階行って水とスポーツドリンク買ってきてもらっていい?」

買物して戻ると、ゆかさんは今日いちにちを説明してくれました。
「採血は前と同じところが使えて、なんとかすぐ採れたよ。
腫瘍マーカーはあまり変わってないけど、高止まりなのかなぁ。
Dダイマー(血栓の指標)はプラザキサ再開のおかげか、下がって5になったよ。
あと『貧血ぎみですが大丈夫ですか?』言われた。
血小板はむしろ高めになってたんだけど。
19日にCT撮って、それ踏まえて26日の水曜日に家族の人交えて相談したい言ってた。
ねこさんそこお休み取れる?」
「うん。大丈夫だと思うよ。訊いてみとく」
「4回めはそのあとになるから、また一週間ずれるかも」


この一週間は、やまねこのワンマンLIVEが間近になってきていて、
その準備もあったりする関係で、面会は一日おきになりました。

6日にはゆかさんの洗濯を手伝いつつ、
治療の進み具合を聞きました。
「ほんとにポートにしてから、点滴落ちるのが時間通りだし、刺し直しの心配もないし、
すごく気が楽だよ。手術きつかったけど耐えた甲斐があったよ。
今日は葛西先生も顔出してくれて、
『今の抗がん剤効いてるんでしょうか』ていちおう訊いてみた。
そしたら『症状を聞く限りでは横ばいだけど、腫瘍マーカーは上がり気味だから、
CT撮ってみて、効いてないいうことになれば続ける意味ないから、再検討だって。
いずれにしてもCT見てみるまでわからないね。中止になる可能性もあるし」
「そっか。でも効果出て、続けられるといいね」

「それから脳神経科の長野先生も来てくれたから、
閃輝暗点のこととか、着替えの手順わからなくなったりすることも訊いたけど、
『そうだね~深刻なものではないと思うよ~」言われちゃった。
「うーんたしかにそうかもしれない。じっさい閃輝暗点はやまねこもたまに起きるもの」
こちらも様子見、ということになってしまったようです。


そして8日の土曜日にはなんとか車の修理も終わり、
ゆかさんはやまねこの運転する車で退院することができました。
「きのう八神さん会えたんだけど、麻痺がひどくなってるみたいで、
独り暮らしは危険だからって施設を勧められたんだって。ずっと泣いてた。
私もいずれホスピス入ることはよく考えるけど、入ったら一気に気力がなくなっちゃいそうだし、
まだできることはある気がするし、トイレにひとりで行けるうちは自宅で過ごしたい」
「八神さん、たいへんだね…」としか言えないのですが、
「ゆかさんはうん、まだできることあるよ。やまねこも全力でフォローするから、
ずっとうちで過ごそうよ」
ゆかさんの気力はまだ残っている、というのが支えのように感じました。






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来週から再来週にかけて、エクレルシで2本のLIVEがあります。

2023.12.10(Sun.)at 祖師ヶ谷大蔵エクレルシ
「杏坂四拾六 すりぃ 〜冬・鍵盤会〜」
OPEN12:30/START12:40/CHARGE\2,400+1D
☆やまねこの出演は4組中3組め、14:00からの予定です。
 配信視聴はこちらから(無料・投げ銭制)→
 https://www.ecllive.com/live-schedule

2023.12.14(Thu.)at 祖師ヶ谷大蔵エクレルシ
「Winter Magic」
OPEN18:30/START19:00/CHARGE\2,200+1D
☆やまねこの出演はトップで19:00からです。
 配信視聴はこちらから(無料・投げ銭制)→
 https://www.ecllive.com/live-schedule

お時間ありましたら、ぜひ遊びに来てくださいね。