うちには、天使がいます。113.高次脳リハビリ施設 | うちには、天使がいます。

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ピアノ弾き語り落ちこぼれシンガー・うたうやまねこと、そのパートナーゆかさん、そして寄り目のみけねこメイさんの、命の記録です。

 


・登場人物
<ゆかさん>
やまねこの奥さん。2020年9月、卵巣がんにより永眠。
2018年4月初めに腫瘍が見つかり、月末にはトルソー症候群による脳梗塞を発症。
手足や会話に障害が出ながら、摘出手術を経て、
2018年9月には全6回の抗がん剤治療も完遂。
諸事情により、ふだんは実家で母と暮らしながら、歩行のリハビリを中心に、
手足のしびれや難聴、高次脳機能障害など、脳梗塞の後遺症や抗がん剤の副作用と闘いつつ、
週末はやまねことうちで過ごす、という生活をしてます。
<やまねこ>
ゆかさんの夫。
落ち着きがなく要領が悪く、おまけにコミュ障。
いまいち頼りないだんなさまですが、
たまにライブハウスでピアノを弾いて歌をうたっていたりします。
<メイさん>
17年前にへその緒つきで捨てられていたところをやまねこと出会い、
それからずっといっしょに暮していた、寄り目のみけねこ。
2018年12月29日、突然猫てんかんの発作を起こし
翌2019年1月9日早朝、病との闘いの末、永眠。


(なお、病院関係者のかたがたほかの名前は、すべて仮名です)


2019年9月8日、新しい部屋の申し込みに行きました。

対応してくれた不動産屋の事務員さんがいろんな話をしてくれました。
ゆかさん「大家さんどんな人かわかりますか?」
事務員さん「同じ敷地にいますよ。介護の仕事をしてる人で」
やまねこ「この人も脳梗塞の後遺症で、介護のリハビリ受けてるんですよ」
事務員さん「そうなんですか!?実は私も去年脳梗塞をやって」
そこからゆかさんと事務員さんの脳梗塞についての共感話が延々と。

思いがけず時間は取られてしまいましたが、こうして、
ゆかさんとやまねこはまた一緒に暮らせることになりました。
とはいえ、これから大家さんの審査があり、そのあと契約になるので、
いつ引っ越せるかは未定です。
ただ、事務員さんが、
「担当の又吉が値引き交渉得意なので、家賃の交渉もしてもらいますね」
と言っていたので、少しでも安くなるように期待しようと思いました。

「ひとつ大きなこと決まったけど、来週はこんどは高次脳のリハビリ施設見学だね。
いいかんじの施設だといいね」
「うん。ちょっと不安けど、楽しみね」

高次脳機能障害とは、
主に脳梗塞とか脳溢血の後遺症であらわれる、さまざまな障害の総称です。
たとえば、集中力が続かなくなったり、記憶があいまいになったり、
複雑な手順が理解できなくなったり、言葉が出づらくなったり、
それこそ千差万別、ひとりひとり違うのが高次脳機能障害です。
そして多くの場合、ぱっと見では普通に社会生活が送れているように見える、
というケースが多く、
本人が一人で生きづらさを抱え込んでしまうことも少なくないと聞きます。

ゆかさんと見学に行くことを決めた施設は、
比較的軽度の障害で、職場復帰を目指すひとのための「就労支援」と、
比較的重度の人のための「生活訓練」のふたつを行っていました。
ゆかさんは生活訓練のほうを見学させてもらうことになっています。

9月14日の土曜日、当日はゆかさんがひとりで通うことも想定して、
バスで行ってみようか、という話も出たのですが、
けっきょくやまねこの運転で車で行くことになりました。
それでもしっかりバス停の場所はチェックして、近くでゆかさんを降ろし、
そこから歩いてみることにしました。

みちみちいろいろな期待や不安について話しましたが、
ゆかさんが不安なのは「あんまり人がいっぱいで、音もいっぱいだったらどうしよう」
ということでした。
たしかに。ゆかさんは聴覚過敏もかかえているので、その不安はもっともです。

その施設は、1階が大きなガラス張りになっていました。
たくさんの人が動き回っています。1階は就労支援の部屋とのことで、
あいさつすると2階に案内されました。
生活訓練は日替わりで、絵を描いたり歌を歌ったり、ほかにも囲碁教室とか、
毎日いろんなことをしているのですが、
この日は「認知リハ」
いちばん基礎的な訓練で、その日に合わせて見学をお願いしたのでした。

施設に着いたのは、14時。
大きなテーブルの周りに、職員さんと通所者さん、合わせて10人以上が座っていて、
「どうぞこちらへ。ちょうどこれから始まるところです。
だんな様もよかったらいっしょに体験していってください」
と、空いた席に招き入れられました。

まずは「積み木自己紹介」から始まりました。
これは最初の人が「〇〇(動物の名前。これは適当に自分で決める)みたいな、
××です」と自己紹介します。
隣の人は「〇〇みたいな××さんの隣の、△△みたいな□□です」と自己紹介して、
そのまた隣の人は「〇〇みたいな××さんの隣の、△△みたいな□□さんの隣の、
☆☆みたいな※※です」これを繰り返しながら、どんどん長くなっていきます。
積み上げていくから「積み木」です。
もちろん記憶するのはたいへんなので、メモを取りながら、
脳を活性化しつつ、みんなの名前も覚えられるゲーム?でした。
やまねこはゆかさんの隣に座って、
ゆかさんが不安でパニックを起こさないようにサポートします。

次に「表情を見つけよう」
たくさんの顔の絵の中から、笑っている女性の絵と、泣いている男性の絵を見つけて、
印をつけていきます。
ここからやまねこも参加してみました。

続いて「声に出して覚えよう」
短い文章を、大事だと思う言葉に下線を引きながら、声を出して読み、
そのあとその文章についての質問に答えます。
終わった人から手を上げるのですが、
やまねこより早い人もいます。
見たところ、ゆかさんと比べたら、ぜんぜん普通の人にしか見えません。
でも、それが高次脳機能障害というものなのです。

さらに「方向をとらえる課題」
「あなたは今、東へ向かって歩いています。左へ曲がり、さらに左へ曲がり、
次に右へ曲がりました。今、どの方向に向かって歩いていますか?」
同じような設問が計4問。これにはゆかさんは悪戦苦闘でした。

ほかにも「イメージで覚える課題」というのもありました。
これは、6人の集合写真のようなイラストを1分間ながめたあとで、
「和服と洋服、それぞれ何人ずついましたか?」というような設問に、
いくつか答えるというものでした。
こんどはこういうのはやまねこが苦手としていて、悪戦苦闘。

途中10分の休憩をはさんで、2時間のプログラムでしたが、
終了20分くらい前にやまねこは事務所に呼ばれ、
これまでの経緯をあらためて説明しました。
リハビリが終わったあとゆかさんも交えて、いろいろな活動の説明を聞きました。
担当の職員さんはとても話好きなようで、詳しく説明してくれました。
「今回の体験を踏まえて、ケアマネジャーさんに話して、
計画を再検討してもらうといいですね。
できたらケアマネジャーさんにもいちどいっしょに来てもらえると、なおいいです。
あと2回くらい体験で参加して、通所なさるかどうか決めたらいかがでしょうか」

施設を出て、近くのマクドナルドで遅い昼ご飯を食べながら、
「どうだった?」と訊くと、
「うん。難しかった。でも音はなんとか大丈夫だったし、がんばってやらなくちゃね」
ゆかさんはそう言いました。
「Z医大病院のリハビリの先生と、ケアマネさんとも相談しないとね。
通えるようになるといいね」
駐車場まで戻る道々、
ずいぶん歩けるようになったな、と思いました。
もちろん杖はついていますが、
道の傾斜や凹凸にもずいぶん強くなったな、と頼もしく思ったのです。
もっとも駐車場の少し手前で疲れてしまったらしく、
ぐっと足取りが重くなってしまったのですが、
少しずつ少しずつ前進していると感じたのです。





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週末のLIVE予定です。

2023.2.25(Sat.)「Diamond Dust」
at 白楽Nap → https://www.hiyoshinap.com/
OPEN17:10/START17:30/CHARGE:\1.600+1D 
☆やまねこの出演は6組中4番め、19:25からの予定です
 配信視聴はこちらから(無料・投げ銭制)→ 
 https://t.livepocket.jp/e/c7qq6

2023.2.26(Sun.)「加藤恵子【初】ワンマンライブ」
at 祖師ヶ谷大蔵IKEDA → https://ikeda.webnode.jp/
OPEN14:30/START15:00/CAHAGE:\2,500
☆尊敬するシンガー・加藤恵子さんのバースデーLIVEにゲストで呼んでいただけました。
 配信視聴はこちらから(CHARGE:\2,000)→
 https://ja.twitcasting.tv/c:ikedaband/shopcart/218642
 コラボもある予定(ジャニーズ歌いますw)お楽しみに。

お会いできますように!