帰ってきた旅猫・メイの奇跡 その2の11.遺留物 | うちには、天使がいます。

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ピアノ弾き語り落ちこぼれシンガー・うたうやまねこと、そのパートナーゆかさん、そして寄り目のみけねこメイさんの、命の記録です。



・登場人物
<メイ>
2001年の5月にへその緒つきで捨てられていたところをやまねこと出会い、
それからずっといっしょに暮している、寄り目のみけねこ。
車でやまねこと旅をする「旅猫」に育ち、
2004年には西伊豆での1週間のサバイバルから生還しました。
<やまねこ>
ライブハウスでピアノ弾き語りをする歌い手。
2009年当時、ふたたび一時的に失業中。


・前回までのお話
2009年7月。
失業してしまったやまねこは「気分転換」と称して、メイをつれて車で北海道へ。
ゆっくりゆっくり、海岸線をたどりながら、知床のキャンプ場へ到着しました。
久しぶりにテントを張り、メイをテントに残して晩ごはんの準備をして、
テントに戻ると、メイの姿が忽然と消えていました。
メイの行方がわからぬまま10日が過ぎて、
LIVEのために帰らなければならない日が近づき、
やまねこは飛行機で東京まで往復することに決めました。

(なお、登場人物の名前は、すべて仮名です)


知床11日め、7月24日。

あさって一時帰京すると決めて、二日の余裕ができました。
この日も人目につかない空き地に行ってピアノと歌の練習をしましたが、
もちろんメイの捜索も続きます。
今日か明日メイが見つかったら、どうする?
メイを車の中に置いて東京に行ってくる?
それともLIVEを直前でキャンセルするか、それは避けたいけれど、
あんまりとらぬ狸(猫?)のことを考えるのはやめよう。
見つかったらそのときはそのときだ。
捜索は全力で続けるのみ。

キャンプ場と、その周りの林の中、
そして登山道の先の山小屋まで、
ただ、同じことの繰り返しばかりで、徒労感も募ってきていました。
少し新しい方法を試してみるべきだ。
なにかほかにできることはないだろうか。

山小屋からの帰り道、ふと、道端に動物の足跡を見つけました。
「これだ!これは手掛かりになるかもしれない」
写真を撮っていって、ビジターセンターで鑑定してもらおう。
その気になってよく見ると、いろいろな小動物の足跡がついているものです。
キャンプ場まで戻る道々、見かけるたびにカメラにおさめました。

足跡に目をこらして歩いているうち、道端に落ちていたものに目が止まりました。
「これも手掛かりになるかもしれない。ひょっとしたら足跡以上に」
慎重に拾い上げて、ポリ袋にしまいました。
(みちみちきのこなどがあったら採って帰るので、ポリ袋は常に持ち歩いているのです)
もう少し歩いて、さらに1個。


「これは、なんの糞ですか?」
ビジターセンターで対応してくれたのは、加橋さんという女性の職員さんでした。
「拾ってきたんですか?」
「ええ、(かくかくしかじか)で、猫の糞なのかどうかが知りたくて」
「そうですか。それはたいへんですね」と、
加橋さんは事情を話すといやがりもせず、糞を見てくれました。
「こっちはたぶんクロテンの糞ですね。それからこっちはきつねの糞」
と言って、加橋さんははっとして目をむき、
「まさか素手で触ってないですよね!?」と訊きました。
訊かれると記憶はあやふやでしたが、冷静に考えて素手でうんこに触るとは思えません。
「ええ…素手では触ってないと思います」
「そうですよね。エキノコックスの危険がありますからね、
かならずポリ袋かなにか手にはめて触るようにしてくださいね」
「中身はなにが入ってますか?」
猫の毛、とかだったら絶望的だ、と思って思いきって訊いてみました。

加橋さんはピンセットで糞をほぐしながら、
「クロテンの糞の中身は昆虫、きつねの糞は植物主体に昆虫が入ってます。
葉っぱごと食べたのかもしれませんね」
少しほっとしました。
どうやら肉食動物といっても、想像以上に昆虫をたくさん食べているようです。
手に入る簡単さからいえば、当然のことなのかもしれません。

足跡の写真も見てもらいました。
「うーん、犬かたぬきか、ひょっとしたら猫の可能性もありますね。
こんど写真を撮るときはサイズがわかるように比較対象になるようなもの、
たとえばたばこの箱なんかを置いて撮るといいですよ」
貴重なアドバイスをもらいました。
「またなにか見つけたら持ち込んでかまいませんか?」
「ご遠慮なくどうぞ」


やっぱり専門家は頼りになります。
犬かたぬき、か…猫かもしれない…
キャンプ場で仲良くなった久石さんご夫妻が、大きなリトリバーといっしょだったな。
足跡見つけたあたりまで散歩に来たりしてるだろうか。
いや、リトリバーの足跡だったら猫と間違えるはずないけど、
そっか、だからこそ鑑定してもらうときにはサイズがわかるように撮らなきゃなのか。

この日たまたま、久石さんご夫妻のテントで夕飯をごちそうになりました。
やさしい旦那様と奥さんと、大きな犬。
宮崎からはるばるやってきて、ひと夏滞在するそうです。
地元の若い人も、何人か遊びに来ていて、情報をくれました。
「××さん(到着翌日の朝、駐車場に行き倒れていた人)結局亡くなったらしいね」
残念な情報でしたが、メイにはなんとしても生きていてほしい。
ふと思い立って「よかったら聴いてみてください」と、
LIVE音源を2曲収めたデモ用のCDを久石さんに差し上げると、
さっそくかけて聴いてくれて、「いい歌だね」と言ってくれました。
「ありがとうございます」

やまねこは本当に、みなさんの好意に支えられている―みなさんに生かされている。
必ず、必ず、結果で応えなくては。





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本日4月16日、祖師ヶ谷大蔵・ライブカフェエクレルシでのLIVEも、
無事終了いたしました。
足を運んでくださったみなさん、配信を視聴してくださったみなさん、
ありがとうございました。
またお会いできるとうれしいです。。


次回のLIVEは、もうすぐ8日後、場所も同じエクレルシです。

2022.4.24(Sun.)
at 祖師ヶ谷大蔵ライブカフェエクレルシ→https://cafe-eclaircie.com/
「昭和歌謡ライブ」
START14:00/CHARGE\2,000+1D

やまねこの出演は15:10からの予定です。
配信視聴はこちらのページから→https://www.ecllive.com/live-schedule
堤真耶さん主催の「昭和歌謡ライブ」いつものブッキングLIVEと趣向を変えて、
昭和歌謡のカバーを5曲歌います。
もちろんほかの出演者さんたちも。
そしてお客さんもいっしょに歌っていただけます。
「昭和歌謡大好き♪」というかた、お待ちしてますね。