帰ってきた旅猫・メイの奇跡 その2の6.目撃情報 | うちには、天使がいます。

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ピアノ弾き語り落ちこぼれシンガー・うたうやまねこと、そのパートナーゆかさん、そして寄り目のみけねこメイさんの、命の記録です。



・登場人物
<メイ>
2001年の5月にへその緒つきで捨てられていたところをやまねこと出会い、
それからずっといっしょに暮している、寄り目のみけねこ。
車でやまねこと旅をする「旅猫」に育ち、
2004年には西伊豆での1週間のサバイバルから生還しました。
<やまねこ>
ライブハウスでピアノ弾き語りをする歌い手。
2009年当時、ふたたび一時的に失業中。


・前回までのお話
2009年7月。
失業してしまったやまねこは「気分転換」と称して、メイをつれて車で北海道へ。
ゆっくりゆっくり、海岸線をたどりながら、知床のキャンプ場へ到着しました。
久しぶりにテントを張り、メイをテントに残して晩ごはんの準備をして、
テントに戻ると、メイの姿が忽然と消えていました。
その夜、そして翌日もメイは戻らず、
3日め。やまねこは携帯の充電がてら少しドライブに出て、
知床自然センターで情報収集してキャンプ場に戻りました。

(なお、登場人物の名前は、すべて仮名です)


キャンプ場に戻って車を降りると、
浅尾さん(おととい会って、メイがいなくなった話をした人)が、
「お、帰ってきた」と言いながらこちらに近づいてきました。
「猫見たって人がいるよ」
「本当ですか!?」
「うん、まあこっち来てみ」
駐車場の反対側、そこにはやはりおととい会話した今井さんと言う人と、
もうひとり初めて見る人が立っていました。
猫を見たというのは、そのもうひとりの上田さんという人で、
どこかぼんやりとした関西弁をしゃべる人でした。

「はじめましてやまねこといいます。
猫、見たんですか?いつくらいですか?どこらへんで?」
「うん。おったおった。2時間くらい前やったかな…あっちの林の中に」
携帯の充電のためとはいえ、キャンプ場を留守にしていたことが悔やまれました。
場所はメイがいなくなったテントと、駐車場を挟んで真反対で、
直線距離にしても100メートル以上ありそうです。
たった3日でここまで移動したのか?
伊豆では一週間、ほとんど移動しなかったというのに?
にわかには信じられませんでしたが、質問を続けます。

「どんな猫でしたか?」
「うーん…黒っぽい猫やった…」
たしかにメイはみけねこですが、黒毛の部分が多く、全体としては黒っぽいかもしれません。
「ほかになにか特徴はありましたか?首輪はしてましたか?」
うーん、影やったから、それはよくわからんかった。
でも、しっぽの長い猫やったなぁ」
たしかにメイのしっぽは、先っぽがほんの少し曲がっていますが、
いわゆるおだんごしっぽではありません。
「もういちど見たらわかりますか?」
「わかると思う。でも俺、もうここ出るから」
その言葉通り、出立の支度をしているようでした。
「どうもありがとうございました」

とりあえず、メイかもしれない猫が目撃された林に入ってみました。
こちらの林は、上のテントサイトの周りの林とはずいぶんかんじが違っていました。
地表には倒木や巨大な岩がいくつも転がっていて、
それこそ猫の隠れる隙間はたくさんありそうでした。
「テントサイトの周りの林が、あまりにもひらけていて隠れるところがなかったから、
こちらに移動してきたのだろうか。それにしても距離が遠すぎる気はする」
半信半疑ではありましたが、
ひとつひとつ倒木や岩と地面の隙間をのぞいて見てまわりました。
だめだ。逆に隠れるところが多すぎる。
ただ、ここならヒグマと出会っても安心だ。
逃げ込む隙間はいくらでもある。体の小ささがメイを護ってくれるだろう。

いったん林を出て、少し迷いましたが、
目撃情報に賭けてみることにしました。
車をテントが見張れる場所から、上田さんが猫を見たという場所に移動しました。
ちょうど今井さんの車の真後ろでしたが、
「ここに停めていいですか?」と訊ねると、
今井さんは「かまわないよ」と快諾してくれました。


やっぱりただ待ってるだけじゃだめだ。もっと広範囲に情報を募ろう。
ノートをちぎって、小さく切り、
そこに「ねこを見かけたらやまねこまで連絡ください。080-XXX-XXXX」と書いて、
キャンプ場のすみずみまで、いちばん離れた下のテントサイトまで、配って回りました。
伊豆のときみたいに、ちゃんと写真を入れたちらしが作れたらなぁ。
でもここは旅先。パソコンもなければ、プリンタもない。
とりあえずはできることをするしかない。
帯広から来たという、海老名さんという年配のかたが、
「うちも去年猫いなくなったけどなぁ、3日目に帰ってきたよ。
かわいそうになぁ」と同情してくれました。
うん、やっぱり猫は戻ってくるんだ。かなり元気づけられました。
目撃情報が当たっていれば、戻ってくるのは予想以上に早いかもしれない。


そのあとも同じ林、それからテントのほうまで、
何度か見まわったり少し昼寝したりして、夜になりました。
テントのほうはいつでもメイが入れるようにした上で、
今日は車で寝てみることにしました。
車の横に少しキャットフードを置いて休もうとしていると、
ものの10分もしないうちに「かりっ」という音がしました。
メイ?
キタキツネでした。ほんとに彼らは人間を恐れないです。
「だめっだめっだめっ」と言って追い払いました。
野生動物への餌付けは、御法度です(結果的に少しあげてしまいましたが)
きつねは懲りずにもう一度現れ、やまねこも懲りずにもう一度追い払うと、
そのあとはもう来なくなりました。
落ちつかない気持ちで、座席を倒して横になりました。





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2022年ワンマンLIVEの詳細です。

2022.3.26(Sat.)
at 御茶ノ水KAKADO→http://www.kakado.jp/
「2022うたうやまねこワンマンLIVE Walk Again and Again」
OPEN17:30/START18:00/CHARGE\2,000+1D
(OPEN/START時間は緊急事態宣言等により前倒しになる場合もございます)
配信サイト→https://twitcasting.tv/kakado__/shopcart/134720
配信CHARGEは\1,600です。

その1本前のLIVEは、とうとう明日になりました。
3.13(Sun.)
at 祖師ヶ谷大蔵IKEDA→https://ikeda.webnode.jp/
「あなたと歌とお話と」
OPEN13:40/START14:00/CHARGE\2,000+1D
☆やまねこの出演は4組中4番めです。
いつもと少し毛色の違うやまねこを―「語るやまねこ」にチャレンジします。
(もちろん歌もうたいます)
配信はfacebookから→
https://www.facebook.com/bar.ikeda
Facebookをフォローすれば、配信が始まるとお知らせが来るそうです。
投げ銭制です。そちらは、このページから→
https://t.livepocket.jp/e/6qtob?utm_source=Facebook&utm_medium=social&utm_campaign=136583&utm_content=org
今回は実験的なLIVEですが、
興味を持ってくださったら、ぜひぜひご覧になってください。


それと今回はもうひとつ、
やまねこの友人「光乃えみり」さんの小説、
「魔法使いへの道 ―腕利き師匠と半人前の俺―」が、
「2021魔法のiらんど小説大賞」の、「異世界ファンタジー部門賞」を受賞しました!!!
書籍化も決まったそうで、自分のことみたいにうれしいです。
興味を持たれたかたは、こちらのページから読みに行ってみてください→
https://maho.jp/special/entry/mahoaward2021/result/?utm_source=newsletter&utm_medium=20220311&utm_campaign=mahoaward2021result
おもしろいです。保証します。ぜひ!