帰ってきた旅猫・メイの奇跡 その1の3.A氏の別荘 | うちには、天使がいます。

うちには、天使がいます。

ピアノ弾き語り落ちこぼれシンガー・うたうやまねこと、そのパートナーゆかさん、そして寄り目のみけねこメイさんの、命の記録です。


 

・登場人物
<メイ>
3年前の5月にへその緒つきで捨てられていたところをやまねこと出会い、
それからずっといっしょに暮している、寄り目のみけねこ。
車でやまねこと旅をする「旅猫」に育ちました。
<やまねこ>
ライブハウスでピアノ弾き語りをする歌い手でしたが、
2004年当時はあまり休みのとれない会社に就職したので、活動は休みがち。
週末に海や山へ出かけるのが生きがいになっています。

<前回までのお話>
2004年10月の3連休。
初日は台風でうちに缶詰めになってしまったやまねこですが、
夜に台風が通り過ぎるのを待って、西伊豆へ釣りに出かけました。
連休2日め、いちにち釣りして、車の脇で晩ごはんを食べようとしたところで、
通りすがりのおじさん「A氏」が声をかけてきました。


A氏「おいしそうだねぇ。これ釣ったの?何て魚?」
「へぇー!釣ったの。いいね。そういうの好きだよ。そうでなくちゃね。
アイゴにボラ?知ってる知ってる。うまいんだよね」
そして、車の中をちらりと見て、
(小雨が降ってきて、軽ワゴンの後ろのハッチを開けて屋根代わりにしていたので、
中はまる見えだったのです)
目ざとくメイを見つけました。
「お、猫もいるんだね」

「・・・ちょっといただいてもいい?」
「え、ええ。割り箸ありますから、どうぞ」
なれなれしいな、とは思いましたが、半ば気圧されたようなかんじもあり、
まあこちらもひとりでしたし、
やまねこはかなり人見知りなほうではありますが、世間話は嫌いではありません。
フレンドリーにしてもらえるのはうれしいことです。
それにもともと、ひとりで食べるにはちょっと量が多いかな?と思っていましたし、
ほめられて気分も悪くなかったのだと思います。

「ちょっと待っててください」
折り畳みの椅子をもうひとつ出して、座ってもらいました。
雨はまだ降っていますが、ふたりならなんとかひさしの下にはいれます。

「おれさ、この近くの山の上に別荘(みたいなもの)を持ってるのよ」
A氏は言いました。
「土地だけ買って、何年かかかって自分で建てたんだよ。
台風が来たから心配でね、様子を見にね。
さっき見てきたけどけっこう痛んでたから、あした修理しないと」
そして今日、A氏自身がなにをしてきたか、いろいろ話してくれるのでした。
「そうだ!これからこの魚持ってってさ、うちで食べようよ。お酒もあるから。
泊まってってもいいよ」

「いえ、食べたらすぐに寝ますから、おかまいなく」
これは本心でした。
「自分で建てた家」にはかなり興味をひかれましたが、
早起きして釣りする予定でしたし、
友人から聞いた話、旅行中に優しく「泊っていきな」と言ってくれた人が同性愛者で、
夜中に行為を迫られた、という話も聞いたことがあったからです。
(彼はかたくなに拒否してなんとか切り抜けたそうですが)
やまねこ自身はLGBTを差別する気は毛頭ありませんが、
正直に言って、同性愛のかたから行為を迫られるのは苦痛です。

冗談めかしてそんな話もしてみましたが、
A氏は「じぶんはそんなんじゃないよ」とはっきり言いました。
「いいじゃん、ちょっと寄っていきなよ」

たぶん別荘を見せて自慢したいだけなんだな、なんとなくそんな気がしました。
「それじゃ、ちょっと見るだけでも」
やまねこは押し問答が苦手です。
とことん遠慮するほうがめんどくさくて、ついつい言いなりになってしまうことがあります。
それに、やっぱりどんな家か見てみたい気持ちはあったのです。

「山の上、ですか?けっこう遠いですか?」
「山って言ってもすぐそこだよ、ほら」
指さすほうを見ると、港のはずれにある小高い山(というか、丘?)の上に、
たしかに灯りがついている家らしきものが見えました。
駐車場から、いつも釣りする堤防へ行くより近くです。距離にして500mもないでしょうか。

軽く家を見せてもらって、すぐおいとましよう。
「それじゃ乗ってきます?」
テーブルやいすを車にしまい、お刺身は助手席のA氏に持ってもらって、
見慣れた漁港の中をそろそろと、A氏の案内で灯りのほうに向かっていきました。


「ここ。ここに停めなよ」
丘の下に車を停めると、
「猫も連れておいでよぉ」とA氏は言いました。
ちょっとだけだし、めんどくさいな、と思いました。
「いえ、猫は車で待ってますから」
それでも「大丈夫大丈夫。連れといでって」
何度か言われると、やっぱり折れてしまいました。
「メイ、おうちへおはいり」というと、メイはおとなしくペットキャリーにはいりました。
「ちゃんとわかるんですよ」
A氏が別荘を自慢したいのと同じように、
やまねこもメイを自慢したかったのかもしれません。

A氏は先に立って、やまねこが今まで入ったことのない狭い路地へ、
というより塀と塀のすきまに入っていきました。
ほとんど歩かないうちに、丘の斜面に2本のレールが見えました。
レールの中央にはワイヤーがあって、昇降機になっています。
「インクライン」というものなのですが、言ってみれば小型のケーブルカーです。
ただ、ケーブルに牽かれて昇降するのは車両ではなくて、
1.5m四方くらいの、水平な丈夫な板でした。
「さぁ乗って!」
板には手すりもついていません。
でもなんかわくわくしてきました。ワイルドです。不思議です。
食べかけのお刺身と、メイのはいったキャリーを持って、あとに続きました。
A氏がスイッチを操作すると、インクラインはがくん!と動きだして急斜面を登っていきます。
港の風景がみるみる下になっていきます。
そして1分もかからずに終点に到着しました。

目の前にA氏の別荘がありました。





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11/7(Sun.)祖師ヶ谷大蔵エクレルシでのLIVEも無事終了いたしました。
足を運んでくださったかた、また配信を見てくださったかた、
どうもありがとうございました。
11/21(Sun.)までアーカイブ視聴が可能ですので、
興味を持ってくださったかたは、こちらから→https://www.ecllive.com/
 (こちらのLive Scheduleのリンクから、購入ページへ)どうぞ。
配信CHARGEは、\1,800です。


そして今月はLIVEがもう1本。詳細も決まりました。
11/27(Sat.) at白楽Nap
「Autumn Winter Song」 
OPEN17:10/START17:30/CHARGE¥1.600+1d

やまねこの出演は5組中2組め、18:15からの予定です。
配信はこちらから→https://t.livepocket.jp/e/5d7hs
投げ銭制となっておりますので、お気軽にご覧になってください。
不本意ながら多忙になってしまい、年内にあと2回ほど高松に行くことになりそうで、
たぶん今年最後のLIVEになると思いますので、
お時間が許すようでしたら、ぜひお会いできるとうれしいです。