うちには、天使がいます。 20.天使のカード | うちには、天使がいます。

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ピアノ弾き語り落ちこぼれシンガー・うたうやまねこと、そのパートナーゆかさん、そして寄り目のみけねこメイさんの、命の記録です。



6月29日、四谷天窓.comfortでのLIVEも無事終わりました。
聴いてくださったみなさん、ありがとうござました。
と思ったら、あっという間にまた一週間以上が過ぎてしまいました。
blog.の中の日付が現在に追いつくどころか、どんどん引き離されていきますが(^^ゞ、
去年の5月に戻って、ゆかさんのお話を続けましょう。



<前回までのお話>
2018年(執筆している時点で去年)4月初め、
やまねこのパートナー・ゆかさんは卵巣に腫瘍が見つかり、悪性の疑いを指摘され、
4月24日火曜日には自宅で脳梗塞を起こして救急車で病院に搬送されました。
腫瘍の引き起こす脳梗塞、いわゆるトルソー症候群でした。
翌日から入院、抗凝固剤の治療を受けていたにもかかわらず、29日、2度めの脳梗塞。
個室に移動し、その夜からやまねこも泊まりこむことになりました。
そして5月2日、ゆかさんは無事手術を終え、翌3日には病棟に戻り、
やまねこも5月4日に予定されていたLIVEを無事終えることができました。。
(なお、病院関係者のかたがたほかの名前は、すべて仮名です)



5月5日、子供の日。
ゆかさんは朝からせきが止まらず、
手術の傷跡の痛みも激しくなってしまったようで、
せきの合間に「痛い 痛い」と声をあげている状態になってしまいました。

きのうの夜は痛みもやわらいでいたようだったのに。
それはそうでしょう。内臓まで届くような傷が、そんなに簡単にふさがるわけもありません。
今日もまた、痛み止めの点滴を追加してもらうことになりました。

9時ころ、やまねこはいつものようにいったんうちに帰ります。
ゆかさんは痛みをこらえながら、
「メイさん(ねこ)によろしくね」と、送り出してくれました。


車でうちへ戻り、メイさんをなでてブラッシングして、
ごはんと薬をあげて、朝ごはんのパンをかじって、病院に戻ります。
すっかり習慣になったような気がするけど、連休はあしたで終わり。
それからは、やまねこは仕事に通う日々に戻らなくてはならないんだな、と、ふと思います。

ゆかさんはあまり良くなっていないようでした。
とにかくせきをすると傷跡に響くようです。
まずはせきがおさまってくれないと。


3時ころには母も来てくれて、
交代で脇に付き添って、会話したりうがいの介助をしたりしながら、
午後が過ぎていきました。


夕方には母を実家に送ってからまたうちに帰り、
そしてまた病院に戻ります。
夕方以降、ようやくせきがおさまってくるとともに、
痛みもやわらいだようでした。

夜にはかなり状態が良くなったようで、
消灯後の部屋でいろんな話をしました。

ゆかさんは「病院出られたら、ラーメン食べに行きたいな」と言いました。
「行けるよ。きっと。
ほかにもまた、たくさんおいしいもの食べなくちゃ」
「まずガス出さなくちゃね」
「ゆかさんのパジャマ、いいよね。自分用にも同じの買っとけばよかったな。
あした買いにいこかな」
「行ってきてねこさん。連休、ゆっくりお買い物にも行けなかったでしょう」
こんなとりとめもない会話でしたが、
やまねこにとっては病院での最後の夜は、
まだまだ不安は大きかったけれど、少しだけ心安らぐ夜になりました。



5月6日。

幸い、ゆかさんはせきも痛みもきのうほどではなく、
落ち着いて目覚められたようでした。
やまねこが病室で目を覚ますのは、今日で最後ですが、
ゆかさんにとっても、たぶん明日、個室から6人部屋に戻ることになるとのことでした。

簡易ベッドを返却する手続きをします。
ここを離れたくはないですが、
連休があって、ここまで付き添っていられたのは、
きっといいことだったんだ、と、繰り返し思います。


いったん帰宅し、近所のショッピングモールに寄って、パジャマを買います。
このあいだここで同じパジャマを買ったのは、
そっか、ふたつ前の日曜日だから、4月22日か。
もう2週間もたったのか、という思いと、
まだ2週間しかたっていないのか、という思いが、
頭の中でごちゃごちゃになります。


病院には、今日も午後から母が来てくれました。
すっかりアクティブになって、心なしか生き生きとして見えます。

「やまねこさん、お昼は?」(←母もやまねこのことをこう呼びます)
「あ、済ませてしまいましたが」
「食堂行きません?」
(ゆかさん)「ねこさん、お茶でもごちそうになっちゃって」
「そうですか、すみません」

というわけで、クリームソーダをごちそうになりました。
母カレーを食べます。すっかりここのカレーが気にいったようです。

病室に戻ると、ゆかさんは少しいぶかしげな顔で、
「今ね、ねこさんたちいない間にね、ガス出たかもしれない」と言いました。
「ほんとに?ごはん食べられるようになるかな?」
「うん、でもね、なんとなく出たような気がしたけど、自信ないの」
ほんとに出たのであれば、また出るでしょう。
気のせいだったとしても、いずれ出るのでしょう。
少しずつ少しずつでも、前進してはいるのです。きっと。
神経内科の先生たちはあいかわらず慎重で、まだ足をおろすことはできませんが、
ベッドを直角に近く起こしていい許可も出ました。

飲み物に関しては、
「お茶くらいなら大丈夫じゃないの?」「水なら…」と、
看護師さんの間でも見解が割れて「確認してきます」の末、
「もうちょっと待ちましょう」という統一見解になりました。


「ねこさん、前持ってきてって頼んだ、『天使のカード』ある?」
占いというものが、ときに精神に良くない(ことのほうが多い)と思っているので、
持ってくるように頼まれたとき、やまねこはあまり乗り気でない顔をしたのですが、
ゆかさんは「うぅん、そういうのじゃないから」と言いました。
「基本的に、いいことしか出ないの」

ゆかさんは、自分では引かずに、やまねこに「引いて」と言いました。
1枚引くと、出たのは「Books」というカードでした。

「(大意)あなたの人生の目的は執筆、編集、読書に関わることです」

「ほらね」と言ってゆかさんは微笑みました。
「ねこさん、書いてね。
わたし、いつかは書きたいけど、頭こんなになっちゃったから、とうぶんは書けないから、
ねこさん代わりに書くね」

そういえばぜんぜんblog.の更新できてないんだった。
もちろんそれよりずっと大切なことがあったのだけれど。

「たくさんの人に知ってもらうね トルソー症候群のこと」
「うん」

今まで、ゆかさんのことを書いたことはほとんどありませんでした。
どちらかというと「そういうの」が苦手だったのです。
ただ、今回のことを書かないという選択肢は、もとよりありませんでした。
「かなり書くことたまっちゃってるけど、書くね。うん」
実際に書き始めるまでに半年以上の時間がかかって、
さらにさらにたまっちゃったわけですが(^^ゞ


夕方には、こんどは間違いなくガスが出て、
看護師さんたちも「あしたからお食事できますね」と喜んでくれました。
「ゆかさん、それじゃまた、あしたも仕事終わったら来るから」
「うん、ねこさん無理しないで」


ほんとうにたくさんのことがあった連休が終わります。
ゆかさんは、何度も何度も危機をのりこえて、ここにいます。

やまねこは明日からとりあえず日常へ。
でも、旅はまだまだ続きます。





<うたうやまねこ今後のLIVE予定>

  7/28(Sun.)日吉Nap → http://www.hiyoshinap.com/
  Open17:10/Start17:30/Charge \1,500+1D(予定)

  8/3(Sat.)四谷天窓.comfort → http://otonami.com/com_top
  Open12:30/Start13:00/Charge \2,000+1D(予定)

  8.13(Tue.)御茶ノ水KAKADO → http://www.kakado.jp/
  OPEN18:00/START18:30/CHARGE\2,000+1D(予定)



  しばらく間隔が開きますが、
  真夏の到来、7/28から、LIVEラッシュになります。
  平和の祈りをこめて、夏の歌をうたわせていただきます。
  おたのしみに!