2024-12-12のブログに線毛機能不全症候群の遺伝子検査の見方を記載しました。
このときは医療者向けに書いたのですが、一般の方々も何が書いてあるか知りたいというご希望はあると思います。保険収載された遺伝学的検査の報告書は、基本は専門家向けで、かなり暗号のようなものですが、おおよそ、次のような順番で並んでいます。
最初に担当医のことや血液の受取日や報告日が書かれます。
次に検査方法ですが、ここには解析対象となる遺伝子のどの部分をどのような方法でサーチして、塩基配列(A、G、C、Tの並び)を得たのか、その手法が書かれています。その上で、公開されているお手本となるような配列と比べて、被検者ではどこの塩基(A=アデニン、G=グアニン、C=シトシン、T=チミン)が違うのか(=バリアントと言います)を見つけて、さらにその中で稀なもの(たとえば一般集団で頻度1%以下)を抜き出しているということが書かれています。
線毛機能不全症候群は稀少疾患ですので、たとえば一般集団の中に1%以上(常染色体上の遺伝子であれば、50人に1人が持っている計算になりますが)見られるようなありふれたバリアントは、一般にこの病気の原因にはなり得ないと考えられますので、最初に除外されています。
解析遺伝子名のところには、現在この病気で保険収載されている26遺伝子の名前が記載されています。
次にそのふるいわけの過程で残った、比較的稀に見られるバリアントのリストが表形式で掲載されます。ここは通常、英語(=国際表記)で書かれていて、それぞれ、26の解析遺伝子の中でどの遺伝子に見つかった稀なバリアントであるのか、その代表的な転写物のID、常染色体上の遺伝子なら染色体2本のうち1本に見つかったのか(heterozygous)、2本に見つかったのか(homozygous)、さらにそれがどのような性質のバリアントか、タンパク質に翻訳されるときにアミノ酸が変化するのか(missense)、しないのか(synonymous)、もっと決定的な異常なのか、それ以外の遺伝子機能に関係しそうなバリアントのか、などが書かれます。さらにそのバリアントとその位置に関する情報が3つの違った書き方で表示され、最後にお手本となる配列(Ref)に対して、塩基配列がどのように変わっているのか(Alt)が、やはりA、G、C、Tで表されます。これらの情報は、それぞれバリアントが病気とどの程度、関係しそうかを予測する上で基本となります。
検査結果のところでは、それぞれ候補となるバリアントがClinVarというデータベースに登録されているかどうかが示されます。登録されているということは、そのバリアントがこれまで人で見つかっていることを意味していて、良性(benign)か、病的(pathogenic)か、よくわからないものか、登録者の判断が記載されます。さらにそのバリアントが日本人(東北地方)のデータベース(ToMMo)でどのくらいの頻度で見られるか、1%なら0.01という書き方で記載されます。世界のデータベース(gnomAD)を参照して頻度1%以下のバリアントを選んでも、日本人では1%以上で見られるありふれたバリアントとわかりますと、それはおそらく日本人の稀な病気の原因にはなり得ないと判断されます。
さらに大きな欠失(欠損)は、もともとこの1塩基の違いをみつける詳細な検査方法では、かえって検出しにくいものですので、特に明らかな場合にのみ、その他の特記事項として「〇〇がhomogyous/heterozygousに欠損しています」などと書かれます。欠失がhomozygousであれば、確定的な結果と考えてまず間違いありません。
そしてその下のコメント欄には、それらの抽出されたバリアントの中に、最終的に診断に結びつく病原性があると判断される遺伝子異常が見つかったのかどうかが書かれます。この判断のためには、報告書には載っていない情報も併せて利用されます。
最後に参考として、用いたデータベースのことなどが書かれます。
かなり複雑ですが、報告書作成にあたってはコンピュータがかなりの部分をやってくれるようになっています。