部品調達では系列を破壊し、販売ではチャンネルを2つに整理しました。しかも取扱車種は全く同一としたのですから、実質的にはチャンネルをひとつにしたのと同じです。
富士重工や日産ディーゼルの株式も、全く躊躇を感じさせずに他社へ売却しました。
航空機事業も譲渡し、経営資源を自動車部門に集中しました。
従来の日産が抱えていた、非合理的な部分、あるいは効果が発揮されないまま抱えていた遺産を、わずか数年で根こそぎ清算してしまった印象です。
一方、ルノーとのシナジー効果の発揮には極めて積極的です。
プラットフォームは、日産の枠に収まらず、ルノーも含めた大掛かりな整理統合を推し進めています。
バワートレインも同様で、日産とルノーの得意分野を見極めて、ガソリンエンジンと電気モーターは日産、ディーゼルエンジンはルノーが中心となって開発するスキームを構築しました。
前にも書きましたが、販売面では、欧州において日産がセダンやハッチパック系を縮小し、SUV中心の車種展開を行っており、欧州では相応の競争力のあるルノーが通常の乗用車種を担うとの役割分担が明確になっています。
このほかにも、部品の共同購買や販売網の相互提供など、あらゆる面でシナジー効果発揮のための取組みを進めています。
車種で言えば、ジュークやエクストレイル(キャッシュカイ)がルノー日産アライアンスの象徴かもしれません。
欧州市場では両車とも日産の稼ぎ頭になっていますが、ルノーでもプラットフォームとパワートレーンを共有する兄弟車としてそれぞれキャプチャー、カジャールが発表されています。カジャールの売れ行きは把握していませんが、とてもセンスのあるデザインでヒットする予感がします。
こうした取組みの効果について、日産は決算の度に金額に換算して公表していますが、日産に対する出資額を遥かに超えた経済的利益を、ルノーだけではなく、日産とルノーの双方に実現していることがわかります。
実質的に親子関係とはいえ、ここまでのシナジー効果を発現した提携は、自動車産業史上初めてだと思いますし、他の産業を含めても、私には思いつきません。
日本のメガバンクを見れば、程度の差こそあれ、いまだに旧出身行間で足の引っ張り合いをしているのですから、ルノー日産のシナジー発揮がいかに稀有な事象であるかがよくわかります。
合併することなく資本関係によって、これほどの有機的なリレーションを構築できたのは、何はともあれ、ゴーンさんの力量だと認めざるを得ません。
日産とルノーの双方の経営者として、隅々にまで目が行き届いてやいるからこそ、シナジーが働く領域に気がつくのだと思いますし、そのカリスマ性により、両社にセクショナリズムの壁を打ち破るカルチャーを根付かせたのも見事でした。
それともうひとつ、これは私のどた勘ですが、両社の提携が上手くいった背景に、そもそも両社の社風が似ていた、ということもあるかも知れませんね。
ルノーは長らく国営企業で官僚体質、母国フランスではプジョーの後を追う万年二番手でした。
欧州で国営企業ですから労組も強力、F1で主導権を握るほどの優秀な技術者を抱えつつ商売は今ひとつ苦手、となれば、かつての日産と瓜二つです。
ですから、社員同士、シンパシーを感じるところが多かったのではないかと推測されます。
もしかしたらゴーンさんは、そこも見抜いて日産との資本提携を決断したのかもしれませんね。
この二社の間に、これからあのダイムラーが入ってきます。
果たしてこれからどのような化学反応を起こすのでしょうか?
