Aさんは私が訪問リハビリで担当していた難病のALSの患者さんでした。
私がはじめてうかがったときには、もう人工呼吸器を10年以上つけていて、動かせるのはまぶたの筋肉だけとなっていました。
YESの時は1回まばたき、NOの時は目を見開くというのがコミュニケーションの方法でした。
例えば
「良い天気ですね」 → パチッ(まばたき)
「痛くないですか?」 → パチッ
「また来週お願いします」 → パチッ
そのようなやり取りを続けるうちに、疑問が湧いてきました。
「AさんにNOはないのだろうか?ただこちらに合わせて本心を表現できていないのではないか…?」
「人間なんだから機嫌の悪いときやリハビリをやりたくない時もあるのではないか?」
ある日、私が「Aさん、嫌なときは嫌って言っても良いんですよ。僕に合わせなくても良いんですよ」と言ってみたら、Aさんはビックリしたように目を見開いていました。
また、イエスとノーで答えられる話はあまり面白くないし、必ず返事を要求するのもこちらのエゴだと気付いてからは、テレビのニュースや冗談なども話すようにしたら、表情筋を動かせないAさんの目も心なしか笑っているように見えました。
日常のやり取りは、往々にして機械的、予定調和的になりやすいものです。
あなたがよく言う「大丈夫です」は本当に大丈夫ですか?
大丈夫なはずなのにスッキリしないのはなぜでしょうか?
まずは自分の本当の気持ちに気付くことから始めてみませんか?
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