相談内容

 

40代独身女性からの相談です。

この方は、東京都杉並区内の地主家系で、1年前にお父様を、半年前にお母様を亡くされました。

 

元々ご両親と3人暮らしで、お祖父様から20年前にお父様が相続された200坪以上ある自宅の建物を壊して、3階建ての鉄筋コンクリート造賃貸マンションを建て、1階部分は1部屋にしてオーナー住戸として、暮らしていました。

 

ご両親と一緒に暮らしていたものの、大企業でキャリアウーマンとして仕事一筋に生きてきており、ご両親を頼ることもなくご両親のお財布状況はそんなに知らない状況。

 

しかし、70代に差し掛かったご両親が突然同時期に亡くなり、一人っ子のご自身が相続してみると、自宅マンションは赤字の状態。

借金をして建てたマンションは、毎月30万円手出しが発生し、返済もままならず滞納までしていることに気づきました。

 

それもそのはず。

2階3階それぞれ6部屋×2フロア=12世帯を賃貸としていたものの、入居は6世帯だけ。

マンションの床面積の⅓を占める自宅は賃料を生まず、実質的に1/3しか稼働していない状況でした。

 

相続税の納税、そして赤字からの脱却、目の前が真っ暗になり、ご相談に至りました。

 

 

 物件の概要

 

・東京都杉並区内駅徒歩10分程の立地

・築20年の3階建鉄筋コンクリート造マンション

・1階部分はオーナー住戸

・2階3階は12戸中6戸が入居中(稼働率50%)

・地積は約200坪

・先祖代々の土地

・ご両親がご自身で管理を行っていた(自主管理)

 

 

 弊社の分析

 

★ポイント

①自身の生活は自身の給与収入で十二分に賄えているお客様

地主一家に生まれて、土地を守っていきたい気持ちはあるものの、一人っ子であり独身で子供もおらず、跡取りはいない予定。給与収入もしっかりあり自分の生活は自分で保持できるため、マンションを手放すことに抵抗感はない。

 

②地主家系という重荷

地主が土地を売るというのは、地元住民にとっては大きなニュースであり、非難されやすいこと。地域コミュニティも残る当該エリアでは「●●さん、実家売ったらしいよ」とか井戸端会議で話題にされそうなことです。売ることは厭わなくともバレたくはないというお気持ちがありました。

 

③建物のポテンシャルが高い

杉並区内でも有数の住宅地で駅からも徒歩10分と賃貸入居者募集に困ることはないと考えました。しかし、オーナー住戸部分が⅓とポテンシャルの⅓が使われず、また管理不足によって残り⅔も稼働率が50%と全体で言うとポテンシャルの1/3しか生かせていない状況です。売却するにしても閉ざされた⅔のポテンシャルを引き出さなければ本来の価格で売却できないと考えました。

 

上記のようなポイントから以下のような提案を行いました。


 

 

 弊社の分析とプロジェクトの実行

 

弊社による高値かつ早期のクローズドな買い取りを提案しました。

 

市場に出しても足元をみられる案件です。

すぐに現金化したい。そう言うと、たいていの人は返済に必要な最低限の金額を提示してくるものです。

しかも、オーナー住戸付、稼働が50%と足元を見たくなる要素満載です。

 

そんな問い合わせが何件かある中、だったらお客様の事情も理解している、マンションのポテンシャルも理解している弊社が現状に対してではなく、ポテンシャルに対して値付けをして、早期に買い取るのが一番だと思いご提案したところ、ご承諾頂くこととなりました。

 

弊社が買い取るためにスケジュールを立てたことは以下のことでした。

 

①まずは上階の空室6部屋のリフォーム工事を早期に行って入居者を獲得する。

②次にオーナー住戸の1階を6部屋に区切ったうえで賃貸に出す。

※壁式構造でのマンションでしたので、2階3階と同様の間取りを作り込むことが可能でした。

③1階の1部屋にご相談者に住んでいただく(リースバック)。

※工事期間中は一旦仮住まいにお引越しいただき戻ってきていただくスケジュールを立てました。

 

弊社もリスクを負っての購入でしたが、結果としては順調に工事も進められ、満室となって不動産の再生も行うことができました。

 

そして一番は、ご相談者が、目の前の滞納も含めて解消することができ、相続した負の資産から解放され、かつ運用できるキャッシュもでき、自宅も変えずに住むことができました。

 

 

 補足~賃貸併用住宅について~

 

この事例から考えさせられることがあります。

「賃貸併用住宅」についてです。

地主さんは、ハウスメーカーさんがよく相続対策などで提案してくるものです。

 

弊社は賃貸併用住宅には消極的です。

それは、投資なのか実需なのか中途半端だからです。

 

投資を考えるのであれば、投資効率のいいマンションを建てたらいいと思っています。

投資効率だけを考えるのであれば、より安い建築費用で、将来にわたってより高い賃料収入を生み、より経費がかからないそんなマンションを建てるのがいいに決まっています。

 

しかし、自宅はどうでしょうか?

水回りがあって寝るところがあれば、安い方がいい!...なんでこと絶対にありませんよね。

もちろん予算もあることだし、コストは考えなければなりませんが、たいていの方が住みやすさをまず求めるのではないでしょうか。つまり、こだわりを優先します。

 

この投資効率とこだわりを共存させるのは至難の業です。

例えば、システムキッチン。

賃貸だと、キッチンが30万円のものを使っていても60万円のものを使っていても賃料なんか変わりません。

だったらより安いものを採用したほうが投資効率がいいわけです。

けれども、家を建てるときに適当なシステムキッチンを入れる人はいませんよね。

デザインも機能もこだわって選ぶと思います。

そういう私も家を買うときに、どれだけショールームに行ったことか。

 

賃貸併用住宅は、こういった理由から、投資効率が非常に悪くなりやすいです。

今回は違いましたが、よくあるのは、最上階の一番見晴らしがよくてバルコニーが広い部屋をオーナー住戸にすることがよくあることですが、普通は最上階が一番賃料が高くなるので、そこを貸さないのは投資効率としては悪いです。

 

ちなみに今回の事例で唯一の救いだったのは、実はオーナー住戸が1階だったことです。

賃料面での話もありますが、それよりも6部屋に分けることができたのが1階だったからです。

 

部屋を分けるときに一番困るのは水回りが取れるかということです。

水回りを新たに作るには給水と排水の配管が必要です。

1階は床下の配管を工事しやすく、その点が今回のバリューアップ工事において一番のポイントでした。もしオーナー住戸が3階だったら、部屋を分けることは考えられなかったかもしれません。

配管を新しく引くスペースが床下に作ることができず、新しく配管を引くこと自体が不可能か、床を上げる=天井高が低くなる可能性が高いからです。

そうなると部屋の価値も下がりますし、工事費用も高くなってしまいます。

 

こんなことも考えて、今回は高値で買い取るという判断をしました。

 

賃貸併用住宅を検討されるときは、こんなことも考えながら総合的にご判断してください。