私樋口が担当する初めてのブログは、「相続で揉めないために今できること」というテーマです。
個人の考えですが、相続対策はあくまでも自分のためにするものだという信念をもって活動しています。
ですので、揉めないことを目的とする相続対策は、目的が間違っていると思います。
あくまでも、ご自身の生き様として、遺していく人が憎みあわないための相続対策を行いたいときに出てくる目的だと思います。
はじめに
相続のご相談を受ける中で、不動産を原因として揉めそうな例は、非常に多いです。
実は「相続で揉めないために今できること」の答えは簡単です。
「遺言書を書く」ということです。
正しい遺言書があれば原則遺言書通りの遺産分割となります。
ですので、遺言書があることで仲違いすることはあっても、争う余地がなくなります。
争うとすると、遺言書が有効かどうかでしょうか。
それでは遺言書を書くとしたら、どんな遺言書が必要なのでしょうか?
そのことを逆算的に考えるために、まずは「なぜ揉めるのか?」「揉める要素は何か?」を考えたいと思います。
遺言書がない場合の遺産分割で揉めるとき、どうして揉めるのか?
一言で言うと、「平等」の捉え方の違いで揉めます。
一方は、同居して両親の介護を行った長男家族、もう一方は遠方で暮らしていた次男家族。
同居していた長男は、当然次男よりも多くの負担があり、その分多く相続できると思っている。
しかし、次男は、「法定相続分」をもらえると思っている。
これは、「平等」の捉え方の違いです。長男は、生前の貢献度に応じた遺産分割が平等だと思っており、次男は法定相続分に応じた遺産分割が平等だと思っているわけです。
この「平等」において不動産は非常に扱いにくい資産となっているため、不動産を原因として揉めるケースが出てきます。
ここから少し深掘りしていきます。
相続財産としての不動産の特徴
相続財産としての不動産の特徴は大きく2つあります。
①分けにくい
不動産(1つの不動産)はほとんどの場合、均等に分けることはできません。
いくら更地を2等分にしても、方向や隣地の建物が何なのかなど、細かい状況は変わってきます(同じ不動産は2つとないと言われるところです)。
建物が建っていたら、建物は真っ二つなどにはできないので、なおさら難しいです。
もちろん、「共有」するという手はありますが、売却、修繕などの運用(経営)で決裁権者が複数いることは、それこそ揉める原因となります。
②価値が人によって違う
不動産は「時価(今売るといくらなのか?)」の設定が非常に難しいです。同じマンションで同じ階の全く同じ間取りの部屋が5,000万円で売れたからといって、自分の部屋が5,000万円で売れるかどうか分かりません。
中の綺麗さが違うと変わってきますし、同じマンション内に10部屋同じ間取りの部屋が売りに出ていれば、競争が起こり値段を安くせざるを得ないかもしれません。
その逆も然りで、人気マンションで1部屋しか売りに出ていないとなると、6,000万円でも買ってくれる人がいるかもしれません。
そんな需要と供給のバランスも常に変化するため、価格が動いていきます。ですので、たとえ不動産業者に価格査定をお願いしても、査定金額はすべてバラバラとなります。
こと相続となると「時価」もそうですが、それぞれの「価値」もかなり違います。
「価値」とは客観的指標(時価)に加えて、主観的指標も加えたものと考えてください。
両親と同居している人にとって、実家は自宅ですが、実家から出て暮らしている人にとっては、あくまでも実家です。
「今必要な家」と「自分が生まれ育った家」は価格は同じでも価値が違います。
このような2つの特徴が「平等」を作りにくい大きな要素となります。
不動産を原因として揉める例
このように「平等」を作りにくい特徴を持つ不動産ですが、この特徴が原因でどのように揉めていくのでしょうか?いくつかのパターン別に考えていきます。
①所有している不動産が1つのパターン
分かりやすく考えると所有している財産が自宅と現金というパターンです。
特に都心部でよくあるパターンですがこんなケースを考えてみましょう。
自宅不動産の時価が5,000万円、現金が3,000万円という財産を持っているトモコさんの例です。
さて、この財産を子供2人で分け方を考えるとするとどうなるでしょうか?
先ほどと同じように親と同居している長男、離れて暮らす次男で考えてみます。
そうなると、やはり住んでいる長男が自宅を相続するのが一般的です。
ただ、そうなると次男は現金3,000万円となります。
この2,000万円の差が問題になります。
金額的に同額を作るためには、長男から次男に1,000万円を支払えばいいわけです。
※長男:5,000万円-1,000万円=2,000万円
※次男:3,000万円+1,000万円=4,000万円
このように1,000万円を支払うことを代償分割と言い、この1,000万円を代償金と言います。
しかし、1,000万円をぽんと出せる方はどれくらいいるでしょうか?
しかも相続税が発生するかもしれません。
そして、1,000万円を払えないから、結局自宅を売却しなければならないとなってしまうと、長男一家の生活は大きく変わります。
こんなことを互いに主張し合うと、揉める要因となります。
②所有している不動産が複数の場合
これもまた難しい遺産分割となります。
そもそも複数の不動産がある場合、そのうち1つは自宅、残りは投資用不動産であることが多いです(相続していた山とか田畑とかがある場合は、ほとんど価値がないことが多いので揉める原因とはなりにくいです)。
投資用不動産を持っていると、これまた価値が分かりにくいものです。
価格も住む不動産に比べてわかりづらいですし、価値となると、不動産投資に興味のない人にとっては重荷にしかならないこともあります。
また、投資用不動産を購入、建設した際のローンが残っていると、負債もセットになるので、負債を嫌がる方にすればリスクばかり感じる資産となってしまい、価値を感じにくいものです。
また、パズルのようなもので、複数の不動産と現金を組み合わせて等価を作ろうとしても、難しいですし、綺麗に時価のパズルにはまったとしても、価値となると等価ではないことになる可能性が高いです。
上手く等価値を作り出せない場合は、①のような代償金の支払いが発生するかもしれません。
結局ここでも、お互いがお互いの主張をすると揉める要因となります。
揉める要素が少しわかってきたでしょうか?
次回は、揉めないようにするにはどんな対策が必要か?をおつたえします。
それでは、次回をお楽しみに!

