◆現実的な仕事 | ゲームデザインエクセレント

◆現実的な仕事

 ざっと見てきましたが、どう進めていくものなのかを具体的にまとめてみましょう。


  まず行うことは、イメージングです。ゲームシナリオを考えるときに重要なのは、作ろうとしているのがゲームであるのを忘れないということ。小説ではないのです。文章として面白いものを作る必要はありません。そして、ゲームプレイにおいて面白くなければ意味はありません。こんなときに有効なのは、"理論"を探すのではなく、現実を想像してみることです。合理的で洗練された創作理論など追い求めても、幻に過ぎません。泥臭い現実にこそ、正解はあります。実際にゲームが動いている状態を想像してみるのです。ゲームシステムやユーザーインターフェイスが概ね決まっているのであれば、それに即して考えます。決まっていない場合は、既存ゲームの何かを元に考えます。


 こうして実際のイメージをしっかり作り上げてから、ストーリーラインを考えていきましょう。また、並行して、各種設定も考えていきましょう。キャラクターがストーリーラインとは無関係に作られることはありません。しかし、特定のストーリーラインから必然的にキャラクターが導かれるというものでもなく、両者の関係は単純ではありません。


  これは、次のような手順になります。


   1、動いているゲーム画面を想像しながら、作っていく
    2、それを、紙に書いてみる
    3、客観的に検討し、不満な点を書き出す
    4、頭の中の引き出しを探し、バランスに配慮しながら対策する


 これをしつこくくり返していくのです。それは、ごく細かな単位でも行わなければなりませんし、要素ごとにみていく必要も出てきます。そして、それらが積み上がってまとまった量になった段階でも、改めて進めていかなければなりません。


  例えばマイキャラをどう活躍させたいのでしょうか。活躍させるためには、敵をそれにふさわしい形で考えていく必要があります。また敵には単なるザコとそれらを束ねるボスとがいます。ザコは主人公に惨殺されるわけですが、それにふさわしい悪事を働いている必要がありますね。その描写が必要になるでしょう。一方で、ザコを束ねる敵キャラは、まず強くなければならないですし、強さを正当化するだけの設定的な意味を持っていなければなりません。そして、必然的に重要キャラになりますから、マイキャラとの何らかの関わりを持たせてやる必要があるでしょう。こうした点も、描写が必要です。そうした特別な相手が普通に倒せたのでは興ざめですから、主人公側にも倒せるだけの設定的な意味を与えてやらなければなりませんね。そして、それを獲得するための何かも必要で、ここで協力者キャラであるとか、知られざる伝説であるとかを用意しておく必要が出てきます。


 こうした作業は、部分と全体を同時に注意しなければならなくなりますが、これは創作の一般的なプロブレムであり、ゲームだけに存在しているわけではありません。ここに悩むと、つい創作理論に頼りたくなるかもしれませんが、現実的には細かく行ったり戻ったりをくり返すしかないと思います。


  そして、「実際のゲーム」をイメージすることが、迷いがちな仕事における貴重な道標になるとも思います。