◆ワールドビルダー | ゲームデザインエクセレント

◆ワールドビルダー

 ワールドビルダーは、いわゆる「世界観」に直結した仕事です。ゲームの背景となる世界を考え、設定として実体化していきます。直接的な造形はデザイナーの仕事ですが、ワールドビルダーは、彼らに示すコンセプトを考えなければなりません。


  こうした役割から見ると、必要とされる局面はレベルデザインよりも多いといえます。象徴的にストーリーを扱う場合でも、世界観を必要とするゲームは多いからです。例えば、格闘ゲーム。ゲームプレイにおいて特に物語的な展開があるわけではなく、キャラどうしが蹴ったり殴ったりしあってるだけですが、そんな場合でも世界観は存在し、キャラクター設定もそれに基づいてなされていますね。


 この仕事をする人は、やはり豊富な知識を持っていないといけません。
  一般教養と言ってもいいですが、世間で言う教養とは、若干ベクトルが異なっていることも事実です。特に重要になる場合が多いのが、古代から中世にかけての歴史・文化でしょう。今日のゲームは幅広い時代を扱いますが、「中世ヨーロッパっぽい架空の世界」は、やはり定番的なのです。とりわけ、歴史の教科書に出ていないようなことにこそ、注意が必要です。王侯貴族の種類であるとか、武器甲冑や軍隊の仕組み、教会のシステムなどです。


  また、ファンタジー分野における先行作品に関する理解も、十分持っていなければならないでしょう。『ドラクエ』などの定番的なコンピュータゲーム、そしてその作り手がリスペクトしている、より古い世代のゲーム(『ウィザードリィ』『ウルティマ』など)は当然視野に修めておくべきですし、コンピュータゲーム以外の代表的な作品についても同様です。『指輪物語』や『クトゥルフ神話』程度は知っておくべきでしょう。
  もちろん、こうした領域だけではなく、自然地理とか民族の文化とかあるいは文学芸術とか、世間的意味での一般教養も、浅く広く知っているべきでしょう。また、一般的にゲームで使われる概念(SFやミリタリーなど)だけではない領域で何か得意分野を持っているということが、作り手としては重要だと思います。私自身は、政治経済にはかなりの自信があります。また、医学や生化学なども、強い方です。どちらもあまり使う機会がありませんが。


 ただ、主客を転倒させてはいけません。ワールドビルダーにとっても、役割の目的は「ゲームプレイの充実」であり、「壮麗な世界の構築」ではないのです。ゲーム世界の設定は、必然性や正当性ではなく、ゲームとしての面白さを価値基準にしなければなりません。また、ゲーム全体としては、システム的に考えることが重要です。魔力に関する属性とか、キャラクターの能力を定義するためのパラメータといったものは、システムであり、同時に世界でもあります。


  先にプレイヤーの欲求について述べましたが、シナリオには、その能力向上の実体化という側面があります。単に数値やフラグとしてのみ示されるだけでは喜べなくても、作品世界の中での意味が与えられれば、楽しさをもたらします。特定のタイミングで何かを与えることはレベルデザイナーの役割ですが、このような意味でプレイヤーの関心を惹きつけるのはワールドビルダーの役割です。