◆物語構成の正体 | ゲームデザインエクセレント

◆物語構成の正体

 では、世間で説かれるような物語構成という概念は、全く意味のないものでしょうか。実はひとつ、大きな役割があります。「説明」です。
  多くの場合、ストーリーは説明する必要があります。特に映画やゲームのような集団製作を前提にするものだと、作っていく初期の段階から、それが必要になります。そのときに漫然と全体を書き連ねたのでは解りづらくなってしまいます。そこで、定型的なフォーマットにあてはめることが、意味を持ってくるのです。
  近年、多方面で多用されるのが、「導入部」「展開部」「終結部」の3パートに分ける構成です。物語の基本要素―舞台や登場人物とその価値観・世界観などをおおまかに知ってもらうのが導入部。いろいろなことが起こり、話が展開していく部分が展開部。そして、クライマックスからエンディングまでが集結部です。


  例えば「桃太郎」を、この三部構成の方式でまとめると、次のようになります。


  導入部:
    「桃から生まれる」という不思議な出生を持つ若者、桃太郎。
    拾ってくれた老夫婦に育てられ成長していく中で、
    人生上の目標を模索するようになった。
    悩んだ結果「鬼退治」にそれを見いだすと、養父母に願い出て、
    僅かな装備品だけを持ち、旅を始めた。

  展開部:
    旅に出た桃太郎は、やがて仲間と出会う。
    キビ団子一個という僅かな報酬で命をかけた戦闘に従ってくれる、
    犬、猿、雉である。
    本来は互いにいがみ合うはずの彼らを統率しつつ、桃太郎は鬼ヶ島に到達する。

  終結部:
    強力な鬼たちに対し、桃太郎軍は宴会のさなかに奇襲を敢行、一方的に叩きのめす。
    鬼のリーダーは桃太郎に降伏、財産と引き替えに助命を申し出た。
    荷車いっぱいに宝物を積んで、凱旋する桃太郎軍団。
    その行き先は、養父母の待つ家だった。


 この三段構成が先にあるという意味ではありません。現実の創作はもっともやもやしていますし、面白さを追求して作ったストーリーは、こんなにすっきりしたものにはならないのです。ただ、説明のためには、四角いものを丸く見せる工夫も必要です。
  もちろん、こうして書ける程度の変化すらないような物語では論外です。「物語は展開させなければならない」こと自体に気づいていない本当に未熟な書き手には、"起承転結"も"序破急"も、標語としてじゅうぶん役に立つことでしょう。