◆ "シナリオ仕事"の範囲 | ゲームデザインエクセレント

◆ "シナリオ仕事"の範囲

 まず、論じる対象を考えてみしょう。「シナリオライター的なもの」とは何なのか、です。
  言葉というものは多様です。そして、古くからある言葉であればあるほど、意味スペクトルも広くなってしまいます。
  現実に、日本のゲーム会社で「シナリオ」と呼ばれる可能性のある仕事は、たいへん幅広いものです。ざっと挙げてみましょう。


  Ⅰ.ゲームにおける物語的要素の考案
     ・キャラクターに関する設定
     ・敵に関する設定
     ・武器やアイテムに関する設定
     ・世界観や自然法則に関する設定

  Ⅱ.ゲームにおける「脚本」にまつわる仕事
     ・ストーリーラインの考案
     ・シーンやカットに関する決定
     ・セリフやナレーションおよびト書きの作成
     ・演出や効果音に関する指示
     ・楽曲に関する指示

  Ⅲ.ゲームプレイの進行に関する諸決定
     ・ステージ/マップの全体的な配置
     ・ステージ/マップの設計
     ・獲得スキルの設定
     ・敵などの出現


 海外のゲームプロダクトの場合、シナリオライターの仕事が意味するのはⅡに限られるようです。Ⅰは「ワールドビルダー」、Ⅲは「レベルデザイナー」と、それぞれ別個の役割名が付けられています。また、演出・効果音や楽曲については、他職種との境界領域でしょう。
  ただ、役割名称の問題と、役割を担当する人間の問題とを混同してはいけません。少なくとも日本では、ワールドビルダーもレベルデザイナーも、独立した職種としては存在していないのです。これらの仕事は、それ以外の仕事も含め「企画」と総称され、ゲームデザインと同じ括りで扱われるのが基本です。加えて、このシリーズの基本的立場――「『誰の専門とも言い切れないが、誰かがやらなければならない仕事』を担当するのは、基本的にゲームデザイナー」――を踏まえると、あまり絞り込むわけにも行かないでしょう。
  そこで、まずゲームにおける物語のあり方を一通り検討し、物語の制作について一般的に論じた上で、レベルデザインやワールドビルダーの仕事へと話を進めていきたいと思います。