◆ はじめに | ゲームデザインエクセレント

◆ はじめに

 冒頭で引用した短文は、対談の中での発言です。糸井重里さんは広告分野の代表的人材で、コピーライター(広告で使用する文章=キャッチコピーや本文を執筆する担当)という専門職の存在を世に知らしめた功績者でもあります。"星目がち"という言葉は、糸井さんならではのネーミングで、ようするに目の中に星がきらきらしてる(しすぎてる)人のことでしょう。
  さて、この「まちがいびと」ですが、ゲームの場合もやはりいるといえます。第1回の中で紹介した"不可解な志望者"たちも、糸井流の3類型でまとめられるでしょう。
  加えて言えば、どの類型に属するのかが、志望職種ごとにくっきりわかれているようにも思えます。
  プログラマ志望者に多いのは圧倒的に「ストレートなまね」です。"***のようなゲームを作りたい"といったあたりからモチベーションを刺激されている場合が多いからでしょうか。実習で出してくる作品も、ファミコン時代のアクションゲームのようなものばかりだったりします。まあ、この職種はそれでよしとする考えもあるのですが、技術屋に絶対必要な要素である「向上心」への作用としてはネガティブに働く場合が多いため、私としては危険な傾向だと思います。
  企画志望者の場合、二番目の「勘違い革命家」が該当します。この分野には「斬新なものはウケる」という素朴な信仰がありますが、それを狙っているうちに、単に「新奇」「珍奇」ばかりになってしまったりするのです。
  そして、三番目の「星目がち」は、やはりシナリオ分野に集中してきます。
  ソフトウェアという工学的な仕組みでできているゲームソフトは、その成り立ち上本質的に理工系なのですが、その中で、シナリオライターという仕事は、例外的に文科系です。また、実際のゲームプロダクトでも、「感動」「泣ける」の類が、肯定的な評価と共に語られる場合も多く、「そういうものを作ることがシナリオライターの役割なんだ」と思いこませるのに十分と言えるでしょう。


 本来、企画とシナリオは別の仕事です。ただ、大きな区分ではまとめられる場合が多く、両方を兼ねる形で仕事をする場合もあります(ex.企画を考え、それが通ったら自分でシナリオを書く)。私自身、会社に入ったときの役職名は「シナリオライター」でしたし、独立後はどちらの仕事もしていました。
  今回は、両要素の境界領域のテーマということになるのですが、内容的にあまり絞りこまず、現実に即した形でまとめていきたいと思います。