◆ 謎めいた職業 | ゲームデザインエクセレント

◆ 謎めいた職業

 最近リメイクされている『宇宙戦艦ヤマト』ですが、私の場合、年代的にオリジナル版のジャスト世代になります。社会がブームと称して騒ぎ出す前からどっぷりはまっていて、"世間の方が自分に追いついてきた"感覚を味わった最初の作品でもありました。
  ファンとして当然サントラ盤も持っていたのですが、大ブームの中に登場してきたレコードに『交響詩ヤマト』*1なんてものがあり、そのオビやポスターにはこんなことが書いてありました。


  「ヤマトの世界がシンフォニーに!
    作曲家**が渾身のアレンジ、
    プロデューサー西崎が丹念にプロデュース!」


 これを見た少年時代の私は、首をかしげたものです。......丹念にプロデュースって、具体的に何をどうしたんでしょうか? 尋ねる相手もいなく、疑問は結局疑問のままになってしまいましたが、プロデュースに送る最適形容詞は果たして何なんだろうかと、今でもときどき思います。


 カタカナ職業というのは元々わかりづらい面がありますが、プロデューサーはその中でもとりわけわかりづらい仕事でしょう。
  真っ先にイメージされるのは、音楽やテレビなどの業界でしょう。感じとしては「会社の人」「上の方の人」で、しかも現場のスタッフ・キャストとは別系統の人種という感じです。一方映画ではこの異質さがなく、基本的に監督と人材的に互換のようです。例えばスピルバーグの場合、しばしばプロデューサーとしても名前がクレジットされていますし、監督が別の人でも映画のテイストは明白にスピルバーグ流です。アパレルやコスメティックなどでは、しばしば女優やタレントの名前が出てきたりします。ただ、女優自ら裁縫仕事をしたり原液を調合したりはしていないはずで、何をしているのかはよりわかりづらくなっています。
  ゲームの場合はどうでしょうか。スタッフクレジット上は昔から存在しましたが、そこは社長の定位置でした。大きな会社になるともう一つ上に「エグゼクティブ・プロデューサー」があり、社長の名前はそこに載るものでしたが、エグゼクティブのつかない"平"プロデューサーも、実際のところは統括開発責任者とか、かなり上の方の管理職だったのです。ただ管理職の管理職たるところは会社の維持運営など日常業務の方にあるわけで、その作品に対してどう取り組んだのかが見えてくるわけではありません。


 このように混乱しがちな仕事なのですが、「商品としてのそれをつくる」と考えればいいでしょう。技術の集積によって作られるものの、純粋に技術だけでは成立しない類の物について、そういう立場で関わっているということです。
  ここで役に立つのが、第1回で述べた「三位相」です。ここで挙げたような製品は、どれも工学・芸術・商品の三つの位相を持ちます。その中で、プロデューサーは商品としての面を中心に取り組むのです。