◆ とりあえず作ってみよう | ゲームデザインエクセレント

◆ とりあえず作ってみよう

 前2章を使ってあれこれと議論を進めてきました。しかし、ゲームデザインは何よりも創作です。論議を積み重ねていても、それ自体は生産的ではありません。絵を作りたいと思ったらまず描くことがだいじなのと同じように、ゲームデザインをしたかったら、まず自分で手を動かしてみることが必要です。
  作るべきものは、直接的には企画書と呼ばれるものになります。しかし初心者にとっては、文書としての企画書の前に、一つ問題があるはずです。ゲームそのものをどう構想するかということです。
  そんなの不要だから、企画書の書式だけ教えてくれればいい......なんていう人も、結構います。
   「アイデアに悩んだことなんてないよ。
    ぼくの場合、次から次へと湧き出てきてしまうんだから」
  一方で、自分のアイデアの貧困をぼやいている人もいることでしょう。ただ、この両者が客観的にみればほとんど違いがないなどということも、実際にはよくあります。「悩んでない」は、実は「悩むレベルにすら到達していない」であるかもしれません。


 この文章を読んでいる方の多くは、ご自分なりに構想した/しているゲームがあると思います。それはどのようにして構想したものでしょうか。私自身のノウハウではあれこれ言えることや言いたくないこともあるのですが、そこから離れて広く世間一般で行われているものという意味で考えますと、代表的なスタイルとして、次の3つが挙げられるでしょう。

  1.自分の好きな既存ゲームを元に、その"オレ流"をアレンジしてみる
   2.世の中に存在する楽しさ・面白さを見つけ、
     その理由を考えて「どうしたらゲームとして再現できるのか」につなげる
   3.日常生活の中から、ふだんは見落としている面白さを発見する


 どんなに面白いゲームでも、必ず飽きが来ます。その飽きの原因を客観的に見つめれば「どこが不満なのか」になり、それを裏返しにすれば「どうすればいいのか」になります。そして、そんな改良案を集め、さらに全体に対しても"オレならこうするのに"を入れていく......そのような形で、一応ゲームの案はできあがります。1が具体的に意味するのはこういうもので、これを「改良型アプローチ」と呼ぶことができます。
  一方2の場合、ゲーム以外のものからゲームのコアアイデアを導くという点で、対象の選び方によっては高い意外性を持つものが出現してきます。実際のゲーム作品にも、いくつかの例を求めることができるでしょう。これを、「構成型アプローチ」と呼びましょう。
  では3にはどのようなものがあるでしょうか。
  例えば『塊魂』など、そうなのかもしれません。授業が退屈なとき、消しゴムのカスをあつめてボールを作ったりしていなかったでしょうか。最初は単に暇つぶしだったものが、次第に自己目的化していって、どんどん大きなボールを目指したり、あるいは変わったものを組み込んだり。そこには、言葉にしづらい楽しさがあります。ではこれをゲーム化したら......? 以上は単なる想像ですが、じゅうぶん考えられることではあります。このような方法を「発見型アプローチ」と名付けましょう。

 さて、あなたの得意のスタイルはどれでしょうか。
  このどれでもないという場合ももちろんあると思います。しかし、かなりの部分がカバーできるのではないでしょうか。