ちょうど半年になるくらいか。症例数の豊富な脂の乗り切った女性乳腺外科医師に執刀してもらった。
昨年6月下旬、すでに猛暑が始まった頃だった。
わたしの場合、原発巣は右胸外側やや奥にある15mmほどのがんだったが、検査を進める中で、同じ右胸の正面上部の浅めの位置に、1mmずつの微小ながんが、2センチを置いてふたつが見つかった。
通常、乳がんで部分摘出術が適応されるのは、がんがステージ2までの大きさで、かつ1箇所のみの場合だ。
2箇所以上の腫瘍が発見された場合、主に次のふたつの理由から、全摘が奨励される。
一に、2箇所以上のがんを摘出すると取り出さなければならない脂肪の量が増えるため、術後、審美的な面で胸の形の左右差が大きくなりすぎるので、部分摘出で乳房(にゅうぼう)を残す意味合いが減じること。
二に、当然がんの分布範囲が広くなっているので、1回の手術でがん細胞を全て取り除くのが難しくなること、だ。
わたしがそれでも部分摘出になったのは、元々胸が大きく、ある程度の脂肪を切除しても残っている脂肪も多いので、うまくバランスを取るような切り方を選択することである意味「やりくり」ができることを言われた。
それと、今回のがんの診察で、わたしは終始ほとんど感情を乱すことが無かった(前にも書いたが、たまたま受けていた会社の乳がん研修から、起こることを知っていたので怖くなかった)のだが、唯一、感情が少し揺らいだのが、治療方針の希望を伝えた時だった。
少し震える声で、もし可能であったら、胸はわたしの体の部分で褒められることのある数少ないパーツなので、残せる部分があるとうれしい、と医師に伝えた。
その時の、わたしという患者にとっての大切なこととして、乳房(にゅうぼう)を残す方向を検討くださったそうだ。
良い医師に出会えたと思う。
右胸は、手術とその後の放射線治療を受けたのだが、今も、術後の傷としての治癒は、まだ完成していないと感じる。
だいぶきれいにつながっているが、外側の縦の傷は、まだ少し攣(つ)れている。
それから放射線治療の副作用である日焼けのような色素沈着が、残っている部分もある。
現在手入れとしてやっているのは、保湿の外に、手術痕用のシリコンのテープを入浴の度に洗っては貼り直している。
通常手術痕用のテープ療法は、乳腺外科や放射線科の医師は、術後2カ月程度でもう外していいと言うが、形成外科の医師は、場合によるが、年単位で付け続けさせることがあるそうだ。
わたしは、自分で観察していて、術後3カ月から4カ月の間はテープ無しで過ごしていたのだが、胸の自重で特に上部の横長の傷痕が上下に拡がってしまったのを見て、以後独断でテープ療法を続けている。
結果は良好で、一度離れかけた傷痕も、だいぶきれいに塞がりつつある。
外科的な意味で十分傷が癒えるのは、医師の話を思い出すと、おそらく術後1年が経ってからなのだろう。
テープ療法と保湿とを、粛々と続けるつもりである。
(おわり)