法久山大前院上行寺:日蓮宗

 別願寺と道路を隔てた向かい側に、上行寺(じょうぎょうじ)がある。山門の正面に本堂が見え、山門の裏側には、左甚五郎作と伝えられる龍の彫り物がある。開山は日範で、正和二年(1313)の創建である。

 山門を入ると、正面に本堂があり、肥後熊本藩主細川家の寄進によって、文化九年(1812)に建立された松葉ガ谷の妙法寺の祖師堂を明治二十九年(1886)に移築したものと言われている。

 本堂の軒には、細川家が作ったと言われる表欄間や前の柱との梁などに、すばらしい龍の彫り物がある。本尊は三宝本尊で、本堂内の正面に日蓮上人像との左手に開山の日範上人像、鬼子母神像、亀に乗った水天増などが安置されている。

 本堂右手にある稲荷堂は瘡守稲荷(かさもりいなり)と呼ばれ、皮膚病のほか、諸病に効験があると知られ、また、鬼子母神像が祀られている浄行堂がある。

 本堂左手は墓地になっていて、万延元年(1860)に、桜田門外で大老井伊直弼を襲撃した水戸浪士の一人広木松之助の墓がある。松之助は事件後逃れてこの寺に匿われていたが、同志が刑死したことを知って、文久三年(1863)にここで切腹し、大正五年(1916)に、本堂前に広木松之助の碑が建てられた。