巨福呂坂の入り口に戻って、鶴岡八幡宮に沿ってさらに北に進むと、神奈川県立近代美術館別館がある。その手前に大きな石碑が立っている。これは鎌倉時代に禅宗の一派である曹洞宗を開いた道元禅師の死後750年を記念して、平成十四年(2002)に立てられた石碑である。

 石碑には、道元禅師が唱えた「只管打座(しかんだざ)」という大きな文字が刻まれていて、この文字は、「仏教の修行は雑念を捨て、ただひたすらに坐禅することである」という意味である。

 左右の壁面には、鎌倉で詠んだとされる十二首の詠歌が刻まれている。その中には、「春は花 夏はほととぎす 秋は月 冬雪冴えて すずしかりけり」の歌も含まれている。この歌は川端康成がノーベル賞授賞式(昭和四十三年十二月)の記念講演で、引用したことから特に有名になった。

 道元禅師は福井県にある曹洞宗の中心寺院の永平寺を開いた僧で、宝治元年(1247)に、鎌倉幕府第五代執権北条時頼の招きで鎌倉にやって来た。そして、鎌倉幕府第三代将軍源実朝の供養をしたり、鶴岡八幡宮の行事に参加したりして、仏法を説き、半年後に、福井に戻ったと伝えられる。