東日本大災害時に効果のあった事例から、被災によるストレスや不眠が続くと、うつ病や不安障害などの精神疾患の発症につながる恐れがある。心臓や血圧などにも悪影響を及ぼし、心筋梗塞や心不全、エコノミークラス症候群などのリスクも高まる。それらの予防には早い段階からの心のケアが欠かせない。
被災者自身も、自らのストレスを少しでも和らげるように努めたい。
 金部長は、不自由な生活を送る被災者に「簡単な呼吸法などで緊張感は和らぐこともある。ぜひ実践してほしい」と呼びかける。
 薦めるのが、東京有明医療大学の本間生夫副学長が考案した「呼吸筋ストレッチ体操」だ。肩や背中などのストレッチに合わせて息を吸ったり吐いたりする。5種類あり、全て行っても5分ほどで終わる。
ストレッチ呼吸法
 ストレスを受けることで速まる呼吸を安定させると、脳の偏桃体と呼ばれる部分の過剰な働きが弱まり、不安や恐怖が和らぐと考えられている。東日本大震災では、岩手県宮古市の市立鍬ヶ崎小学校がこの体操を取り入れ、子どもたちに不安の軽減効果が表れた。
 本間副学長は「熊本でもぜひ生かしてほしい」と話す。呼吸筋ストレッチはiPhoneとiPadで利用できるソフト「呼吸ストレッチ」もあり、無料でダウンロードできる。
 余震に強い恐怖を感じたり、不安で眠れなかったりするのは、今回のような震災では自然なことだ。深刻に考える必要はなく、多くは、悩みを周囲の人たちと共有し、生活環境が安定すれば次第に収まる。
 米国立PTSDセンターなどは、救援者側に対しても、「災害にあった人すべてがトラウマを負うとは考えないでください」「被災者を弱者とみなし、恩着せがましい態度をとらないでください」などの心構えを示している。
(医療部 佐藤光展)YOMIURI ONLINE記事より抜粋