北海道産小麦を使い始めた大手製パン業者、コンビニ〜北海道産小麦が足りなくなる?!〜 | No Bread No Life

北海道産小麦を使い始めた大手製パン業者、コンビニ〜北海道産小麦が足りなくなる?!〜

こんにちは。
前回は、北海道産小麦の生産現場について少し話しました。
小麦の生産には、色んな作物とのバランスがあり、「増産が容易ではない」ということについて説明しました。

今回は、場面を換えて、パンを作って売っている現場について「製パン業界」や「コンビニ」などの小売り店での動きについて話したいと思います。
何故かといいますと
ここ1~2年で急激に市場に「北海道産小麦パン」が流通し始めたからです。

そもそも一昨年までは、北海道産小麦が余っており、買い手がつかずに売れ残っていたのですが
昨年から状況は一転し「全量入札」という結果になりました。
生産した小麦のほとんど量に、買い手がついたんです。
この状況に農家さんは「今年は全部売れて良かった良かった♪」と一安心でした。
が!
実は一安心ではないんです。これが。
この時(2015年)は完売しましたが、前年までの状況がヒドくて、小麦の作付けを減らす地域もありました。
散々だったからです。

というのは
「製粉会社の倉庫にある小麦の在庫がはけず、在庫過剰な状態だから、今年収穫した分は、ちょっと遠慮しようかな」という状態だったんです。

農家さんからすれば
「せっかく育てて収穫したのに、買い取ってくれないってどういうこと?!」
と市場に対して「それはないだろう!(怒)」的な感じでした。
さらに、追い打ちをかけるように市場原理が働き
「買い手がつかないなら、値下げするしかないよね」と
前年を下回る入札価格へと下落・・・。
農家さんの収入が減ることに。
農家さんはこの出来事があったため、一部では「売れると思って作ったのに。じゃあ来年は生産量を作付けを減らす!」と。
これに懲りた農家さんは「来年は作らない!」という地域もありました。
そして、2015年のいきなり「完売御礼」
市場は「欲しいっっ」と。

農家さんは「昨年は、余っているから買わないって言っていたのに、今年はもっとくれって言われても・・・すぐには増産出来ないんだよ。」と冷めた眼で市場を観ています。

「生産現場と市場」のちぐはぐ感が浮き彫りになっているのが現在の状況です。

どうも農家さんの話を聴くと、生産現場に市場の情報が流れていないように見えました。

このちぐはぐを回避する手段があったんですよ。実は。
この件についてはいずれどこかで。


■市場が求めている!
2015年初頭からの国産小麦の「入札が順調」という喜ばしい状況が起きています。
市場が北海道産小麦を求めているのです。
店頭では「北海道産小麦使用」と記載したパンも急激に増えて来ています。
北海道産小麦を使用するパンの個人店も徐々に増えていますが、
それ以上の量が市場に出回るようになっているのは「製パン工場」での使用が増えたことが要因です。
製パン工場は、高い生産能力を持ち、小麦使用量も個人店とは比較にならないくらいの量です。
加えて広範囲の販路を持つ流通経路(流通会社、小売り網)を持っています。
製造+流通+販売=大量消費(市場) と末端まで届くしくみが整います。
届くしくみが整備されるということは、その先にある消費市場も目の前にある、射程距離圏内にまで来ていることを示唆しているのではないでしょうか。
北海道産小麦の大量消費時代の到来?!


■動き始めた製パン会社とコンビニ各社
世間一般に広く「北海道産小麦のパン」を知らしめた会社があります。
その先駆けが敷島製パン(Pasco)の「超熟」です。

同社が「北海道産小麦ゆめちから使用」というフレーズで市場に与えたインパクトはかなり大きいと思います。
特に同業種(業界)に与えたインパクトは大きいのではないでしょうか。
敷島製パン(Pasco)の工場レーンにおいて、「北海道産小麦が工場レーン製造での使用に耐え得る」ことを証明したわけです。
この新たな観念を業界内に広めたのがこの「超熟」だったといえます。

また
超熟が「ゆめちから」なら、「春よ恋」でパンをリリースしたのが
2年前から北海道産小麦のパンをリリースした大手コンビニ「ローソン」です。
それから、北海道地元企業の「セイコーマート(現:セコマ)」も道産小麦のパンをリリースし、
札幌の製パン企業「日糧製パン」も道産小麦のパンを積極的にリリースしています。
そして遂に今年2016年早々に、業界大手の山崎製パンも「北海道産小麦のパンシリーズ」をリリースしました。
こうして、各社が道産小麦のパンの製造を始めました。
製パン会社や小売り業界が動き始めたわけです。


■大手製粉会社も動き始めた
私が思うには、これほど急速に市場に北海道産小麦パンが増え始めたことの要因は
製粉企業大手日清、ニップンが北海道産小麦を取り扱い始めたことではないかと考えています。
これにより道産小麦の流通経路が全国的にかなり太くなったと考えています。

2.3年前は「北海道産小麦は眼中には無い」と言っていた営業担当者の言葉が思い出されますが
売れるとなれば手のひらを返して扱い始めるという姿勢の転換は一体どういうこと?
と思いましたが、これにはそれなりの理由があると推察しています。
大手製粉会社は、その製粉能力と備蓄能力は世界のトップレベルです。
そしてこの能力が意味するところは、市場に対する「高い安定供給能力」を持つということです。

大手製粉会社が「北海道産小麦」を扱い始めたということは
その先、つまり小麦粉を使う会社、それもかなり大量に使う会社がいるということを示唆します。
そして作った分を消費する市場があるということ。
つまり
大手製粉会社が扱うのに見合うだけの、北海道産小麦の消費市場が急速に成長しつつあるということ。

ここ2年くらいで
個人店での使用から、地元製パン企業→コンビニ→大手製パン企業へと
予想を上回るスピードで北海道産小麦の使用が広がっています。

これはもしかしたらもしかして
「北海道産小麦大量消費時代の到来」が来るのかもしれないと期待するわけです。

ま、そういっても、生産能力は急激には伸びないので作れる量にも限度があります。
大量消費とはいっても作った量は、とりあえず消費できるかなぁくらいのレベルと思っています。

もう一度思い出してみて下さい。
国内の小麦自給率はわずか10%です。
10%の小麦を完全に消費できたとしても、自給率(生産能力)が上がらなければ意味がありません。

自給率も上がって、同時に消費も伸びる。
という、両方が伸びてこそ意味がある成長市場です。

何が言いたいかというと
生産現場と消費現場が共に成長する関係性を築かなくてはならない
ということです。

先にもいいましたが
生産現場と市場のちぐはぐ感をぬぐわないと、いくら市場が「欲しい」と言っても、生産現場に伝わらなければ
そもそもの小麦原料が手に入らないわけです。

お互いがしっかり情報交換し合って、立場を理解し合いながら、距離の近いお付き合いが出来れば
ギャップは縮む、無くなるはずです。

これをシステム化できればいいのですが、現在はそのような構造にはなっていません。
ただ黙っているわけにもいかないので
積極的に動いている製粉会社もあります。
生産者もまた、消費現場へと足を運ぶように動き始めています。
パン屋さんは、日頃の営業の中で消費者の感想を聞き取り、製粉業者や生産者へ伝えるようにしています。

こうのように やる気のある人が頑張っているというのが現状で、制度/システムとして声や情報が伝わり、連携し合いながら、それぞれの現場で「声」を活用していけるようになれば、もっと地域・地方全体での取り組みへと発展していけるのではないかと思います。
さきほども言いましたが「ちぐはぐ感」の解消にもなると思います。

市場が欲しい!と言っている今、北海道産小麦は市場に売り込む大きなチャンスを迎えています。
これを逃しては、せっかくこれまで耐え忍んできた国産小麦市場の成長の機会を失うことにもなりかねません。

市場に応えるべく、臨機応変な対応が生産現場には求められています。
一度裏切られた感があるのも事実ですが
歩み寄り始めている市場(恋人と思って下さい)の気持ちに応えるのは、今しかありません!
これを逃したら
来るべきTPP時代には、もっと手遅れなことになります。

市場の心をつかむのは今でしょっっっ!!!!!!


本日はここまでです。