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寄せてはかえし
かえしては寄せて
寄せてはかえし
かえしては寄せ
ゆるり ゆるり と波に浚われ
かえしては寄せて
寄せてはかえし
ゆるり ゆるりと 波に飲まれ
寄せてはかえし
かえしては寄せて
ゆるり ゆるりと 波に押され
寄せてはかえし
かえしては寄せて
どれくらい眠っていたのだろう
目が覚めると、頭上には眩しい程の月が
揺ら揺らとゆれ、俺は泣いているのかと思った
イヤそうではなく、俺は水の中に居るらしい
どうやら俺の身体は
満ち潮と共に、浅瀬へと引きずり込まれ
見えない筈の月が、海面を通しても良く見えるのだ
果たして、この思考と言うものは
死んでしまった者に対し、どう働くのだろう
考える事を止めてしまった脳は、思考を止めずにこうして考え
それに、見える筈もない月や
何者達が、この身体を喰らう感触は何処から来ているのだろう
痛みはないものの、どうにもやり切れない
俺は、この肉体が奴等に喰われるまで
こうして肉塊とし、ココに存在しなければいけないのだろうか
眼の前には、蟹らしきモノが見え
口の中にも、何かが蠢いている
脳を喰われるのは、そうそう時間は掛からないだろう。
だからこそ ゆらりゆらりと輝くその月は
まるで泣いているようにも見えるのだ
いや、もしかすると
本当に、俺自身が泣いているのかもしれない
果てしなく、限りあるであろう時間は
こうして奴等に喰われ、俺の存在さえも喰われ
海の藻屑となり、何れは消えていく
寄せてはかえし
かえしては寄せて
果てしなく、限りなく
かえしては寄せて
寄せてはかえし
闇の中
あぁ、、、
俺はどれ位の長い間、眠っていたのだろう、記憶が酷く曖昧だ
それにこの暗闇は一体なんなんだろうか、、、
だが俺は横たわっているのか、それとも立っているのかさえも分からない程の真の暗闇だった
そして目を開けているのか、瞑っているのかも分からない
音も、光も、風も無い、ココにあるのは真の暗闇なのだ
ただ唯一の存在とは己だけではないだろうか、そんな絶望感がヒシヒシと迫ってくる
音も光のない世界とは、こうも不安になるのだろうか
己の中にある恐怖心と戦いながら 出口を探す為に俺は「歩く」事にした
だがこの歩くと言う行為も 真の暗闇の中で 本当に進んでいるのだろうか
本当に歩いているのか と 自分の中の猜疑心を無理やり押しのけ歩を進める
それは自分との戦いでもあった。
在るであろう出口を求め歩き、常に猜疑心に悩まされ
もしかすると俺は歩いている振りをしているだけで、立っているのではないかと
それよりも夢ではないのだろうか と
風も無い真の闇は、己の心をも蝕み全てを投げ捨て叫びたかった
けれども、この五感を通じて伝わるものは真実であり
また己と言う存在こそが確かな事実なのは間違いない
そう思わなければ、俺と言う人格は破綻しそうになるからだ
光もない、音もない、、、
あろう筈である、自分の心臓も聞こえないのだから。
あぁ、俺は死に人だ。
けれども、こうして此処に居ると言う事は
やはり魂と言うものが存在しているのだろう
疲れる事もないが、時間の感覚もないまま歩く事は どうにも不安だ。
一筋の光もなく歩いているのは どうにも心細い
あれから、どれ位の時間が経ったのだろう
1時間?それとも1週間、もしかすると1ヶ月近くも歩いているのかもしれない
と言うのは、時間の感覚が失せているからだ。
歩けど歩けど、その風景は何も変わらず 真っ直ぐ歩いているのかも定かではないからだ
と、その時 足元に硬い何かがブツかった
即座にしゃがみ込み、手探りでソレを触ってみる。
自分以外の硬い感触、ひんやりと冷たく、ザラザラとした感触が伝わってくる
紛れもない石だ、手探りで俺以外のその感触を確かめると、壁にブツかる
「壁だ! 壁があるなら扉があるに違いない」
そう思い、また手探りでその壁を触ってみる すると又同じ石であろう平面に触れる
これは 階段だ、、、 階段なのだ
俺は驚愕し、直ぐ様その上を凝視した
消えるとも言える程の光が射している。








