https://youtu.be/tg52up16eq0

本国ではクリスマスには公開されて、様々な権威ある賞を受賞し、そして、ついにアニメ作品賞として数年ぶりにピクサーやユニバーサルからオスカーを奪い去っての満を持して公開の「スパイダーマン スパイダーバース」。
先行公開のIMAXで劇場にスイングして跳び込まずいられようか!!……て勢いで鑑賞してしました。

これまで様々な方々が各々の賛美句を並びたて、なによりも証拠としてほんとに様々な賞を受賞しているので言わずもがな名作。
ですが、この映画、非常に観る人によって観える角度が違い、感じる事も違うと思うんですよ。実際、今までのレビューを読んでいると十人十色。色んな想いが重なってるだなぁ……て印象。であるなら、自分のことばを持ってアウトプットしてこそではないでしょうか。

僕は、自他ともに認める重度のMARVELオタクですね。と言うか、世代的に映画を観ていたら必然にMARVELがそこにあるみたいな世代なので、どうしても切り離せない存在になってしまってるんですよね。
で、スパイダーマンと言えばその金字塔じゃないですか。でも、世間的にはアメコミ=スパイダーマンくらいの認識ですが、僕は、当時はX-MENの方に夢中でした。
それでも、スパイダーマンはポップカルチャーの時代に常についてくるものでもあり、ゲームだったりでアメコミ映画が流行りだす以前から親しみのあるキャラクターであることには変わりはないです。

スパイダーバースは、様々な世界のスパイダーマンが大集合する映画。同名の原作もありますが、そちらだとスパイダーマン狩りをしてるスパイダードラキュラがスパイダーマンを集めて反撃する……みたいなエピソード。日本でも放送してたアメリカ製アニメにもスパイダーバースはあり、どちらかと言うと今回はそちらに近い感じ。
わざわざそうする必要もないんですけど、原作のエピソードは好きなので、どうしてもコミックをリーディングしないんだろうという疑問もありました。

ですが、このスパイダーバースはスパイダーマンによるスパイダーマンの為のサプライズと僕は受け取りました。その為の今回の構成だったのではないかと思います。

主人公は、2代目スパイダーマンのマイルズ・モラレス。
ですが、冒頭はお馴染みピーター・パーカーで始まります。
たぶん、1番馴染みあるライミ版ピーターを想起させるピーターとしての紹介。マイルズのサイドキックであり、もう1人の主人公。
なので、このピーターはすごくくたびれているんですよ。知っての通り、大いな行いの為に大いなる犠牲を払ってきたので。
腹は出てるし、髭は生えてるし顔はやつれてるわ。
そんなピーターが別世界から蜘蛛に噛まれたばかりのマイルズの前に現れるわけです。最初はいきなりスパイダーマンになって困惑してるマイルスを煙たがっていますが、そこはピーター、なんやかんやで面倒を見ることになるわけです。

そして、キングピンが率いるヴィラン軍団の陰謀に2人で挑む中で他のスパイディたちと合流していきます。他のスパイディも漏れなく大いなる責任の洗礼を受けていて、マイルズだけ受けていない状況。しかし、周りがみんな同じだからと他の5人のスパイディはマイルズにスパイディになったこと自体に同情します。
結局、マイルズもその洗礼を受けるわけですが、その前にピーターがマイルズにかけることばがあります。
「自分を信じて跳んだものこそスパイディだ」
……と。そのお陰で、マイルズは責任でスパイディになる事から解放された新たなスパイダーマンとして誕生するです。
そんなマイルズが他のスパイディを助ける立場となるのです。自分の信じたものを信じて、跳んで。

今までのスパイダーマンは、お馴染みの「大いなる行いには大いなる責任にが伴う」をあたかもそれこそスパイダーマンだと言わんばかりに呪いのように囚われていました。正直、ライミ版もアメイジング・スパイダーマンもそこが毎回観てて窮屈だったんですね。(ホームカミングはトニー・スタークという新たなスパイスで全く別な方向に向かっていますが)
「大いなる行いには大いなる犠牲が伴う」はベンおじさんのことばであって、スパイダーマンのことばではない。それを軽々振り払うようにピーターがマイルズという新しいスパイダーマンに「自分を信じて跳んだものこそスパイダーマンだ」とことばを与えたのが爽快でした。
そして、そのマイルズがそれぞれのスパイダーマンを救うというスパイダーマンの為のスパイダーマンによるサプライズ。スパイダーマンファンとして、心躍らずにはいられないですよね。

そして、今回はアニメというフォーマット。実写より明確にコミックのビジョンを残せるわけです。
アメコミ映画という文化が大衆文化となっても、アメコミという自体はこの日本では大衆文化となりえなかったので「遂に多くの人の目にアメコミの表現の面白さが届けられるのか!」と興奮したものです。しかも、それがスパイダーマンで。
それは、想像以上の形で実現していました。
しかもこれ、スティーヴ・ディッコ初めとしたアーティストのイメージも取り入れてるけど、新しいスパイダーバースのシリーズをアニメにしたような素晴らしく新しいアート。
手描きのように見せるようにした3D表現にアメコミとしてアニメを作ろうっていう魂に満ちていました。
途中、コマを目で追う表現も入ってきますが、ああコミック目で追う感覚これこれみたいな(笑)
実写のアメコミ映画が数ヶ月に1作公開されるような世の中でアメコミを映画にしようと徹底した魂、ほんとに気持ちのいいものでした。
加えて面白いのが、モノクロ世界から来たスパイディノワール、未来から来たロボット少女のペニー・パーカー、トゥーン世界から来た豚のスパイダーハムとそれぞれの世界のスパイディのそれぞれの表現が抜かりがなかったのもキャラ付けとしても絵的にも楽しかったです。
特にペニー・パーカーなんか、日本のアニメの女の子表現できらきらしてて改めて萌なんて言葉があるのを分かっちゃうくらい。

待ちに待った甲斐ありました。
アメコミをここまで徹底してアニメに持ち込むとこんなアーティスティックな作品になるのかと。
ストーリーとしては、2019年、アメコミ映画の1つの大きな特異点とも言える年の初めとしてスパイダーバースが公開されたことに大きな意味があると思います。
僕としても、もっと広い気持ちでアメコミていう文化を受け入れられるような気になりました。なにより、スパイダーマンに大してさらにオープンな気持ちになりました。

ほんとはキャラクターとかももっともっとピックアップして語りたいところばかりなのですが、まぁそれは吹替えが公開された時にでも。吹替えは吹替えで、声優オタクとして火がつきそうで楽しみで仕方ないです。